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薩摩琵琶 さつまびわ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

薩摩琵琶
さつまびわ

琵琶の一種およびその音楽。薩摩には鎌倉時代初期島津忠久に従って薩摩に移った京都盲僧第 19代宝山検校によって琵琶楽が伝わった (以後「薩摩盲僧」と称される) 。 16世紀後期には,薩摩藩の島津忠良 (号は日新斎) が藩士の士気を高揚し修養する目的で教訓歌を作り,それを盲僧淵脇寿長院が作曲したのが薩摩琵琶誕生のきっかけとなり,以来島津家の保護のもとに発展し広まった。のち次第に戦記物などが多く歌われるようになって質実剛壮を旨とする面 (士風と呼ぶ) が強くなった一方,江戸時代中期には優麗な曲風 (町風) も生れ,幕末にはこの両風から池田甚兵衛が新しい流を編出した。これが今日に伝わる薩摩琵琶の祖となり,現在正派,錦心流 (ここからさらに錦琵琶が分派) の派に大きく分れて継承されている。楽器薩摩琵琶は淵脇寿長院が改造したものといわれ,4弦4柱 (錦琵琶は5弦5柱) ,楽琵琶より小型であるが海老尾は楽琵琶より大きく,柱も大きく高い。撥 (ばち) も特に大きい扇状で,この撥で腹板を鋭く強くたたく手法は薩摩琵琶の特徴の一つでもある。一般にはほとんど直立に近く構え,左手は柱と柱の間で弦を押える。琵琶は歌の伴奏はせず,声の部分と琵琶の部分とに区別される。旋律型には聞かせどころにおかれる勇壮な「クズレ」やしんみりとして優雅な「吟替 (ぎんがわり) 」のほか下段,中段などがある。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

薩摩琵琶

鎌倉時代の初めに島津氏初代の島津忠久(1180〜1227)が九州に来た時に持ち込まれた盲僧琵琶が起源とされる。島津本家15代当主の父で、加治木島津家初代当主の4代前の島津忠良(1493〜1568)が、武士の士気を高揚しようと、豪壮な音が出るように改良。仏教や儒学の教えを広めるためつくった「島津いろは歌」の演奏に用いた。明治時代になり、より洗練された「錦心流」「錦琵琶」「鶴田流」などが生まれた。それ以前のものは「正派薩摩琵琶」と言われる。「正派」「錦心流」は四弦、「錦琵琶」「鶴田流」は五弦の琵琶を用いる。

(2007-11-28 朝日新聞 朝刊 鹿児島全県 1地方)

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デジタル大辞泉の解説

さつま‐びわ〔‐ビハ〕【×薩摩××琶】

室町末期、薩摩で発生した琵琶音楽、およびそれに用いる楽器。勇壮な歌詞、悲壮な曲風のものが多い。普通は4弦4柱(じゅう)の楽器をひざの上に斜めに立て、扇形に大きく開いた大形の撥(ばち)で弾く。現在、正派・錦心流・錦(にしき)琵琶の三派がある。

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百科事典マイペディアの解説

薩摩琵琶【さつまびわ】

琵琶楽の一流派。戦国時代に薩摩の島津藩の武士が琵琶を伴奏に剛健な歌を歌って士気を高揚したことに始まり,これが町人階級にも行われるようになったが,そこでは武士とは違った娯楽的な歌が喜ばれた。
→関連項目筑前琵琶鶴田錦史盲僧琵琶

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デジタル大辞泉プラスの解説

薩摩琵琶

室町時代に薩摩地方(現在の鹿児島県)で発生した琵琶音楽。またその音楽で使用される弦楽器。楽器は雅楽の琵琶よりやや小ぶりのものが多い。柱(ちゅう)は高く、扇形の大形の撥(ばち)で演奏する。

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大辞林 第三版の解説

さつまびわ【薩摩琵琶】

室町末期、薩摩に興った琵琶、またそれを伴奏とした語り物音楽。町家で行われた町風と、武家の士風を幕末に池田甚兵衛が融合した正派のほか、明治時代東京で永田錦心の立てた錦心流、その門下より出た水藤錦穣が考案した錦にしき琵琶がある。楽器は楽がく琵琶より小さく(全長約1メートル)、四弦四柱で、柱は大きく高い。扇形の大形の撥ばちで奏する。錦琵琶は五弦五柱。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

薩摩琵琶
さつまびわ

琵琶楽の一種目、およびそれに用いる楽器の名称。筑前(ちくぜん)琵琶とともに琵琶楽の二大流派をなす。
 室町時代末、薩摩(鹿児島県)の島津藩主島津忠良(ただよし)(1492―1568)は武士の闘争心をそそる目的で教訓的な歌詞をつくり、薩摩盲僧(もうそう)31代淵脇寿長院(ふちわきじゅちょういん)にこれを作曲させた。同時に、寿長院は盲僧琵琶を改良して新しい琵琶歌のための楽器をつくった。これが薩摩琵琶の音楽と楽器の起源であるが、当時は薩摩琵琶とはいわず、琵琶歌とのみ呼称していたらしい。戦国時代を通じて、弾奏を薩摩武士にしか許さなかったが、江戸時代中期以降町人も演奏するようになった。質実剛健な前者を「士風琵琶」、艶麗(えんれい)優美な後者を「町風琵琶」とよぶ。江戸時代末期、池田甚兵衛という名手がこの士風と町風を融合し、今日の薩摩琵琶の様式を確立した。明治維新以後、東京では薩摩の名士が多かったため薩摩琵琶が東京を中心に広まっていった。明治後期、東京の永田錦心(きんしん)は艶麗な技法を豊かにし、錦心流を開いた。この流派は大正から昭和初期にかけてもっとも人気を集めた。以後、在来の薩摩琵琶の伝統を正派とよぶ。さらに昭和初年、錦心流の水藤錦穣(すいとうきんじょう)は琵琶を改良して錦(にしき)琵琶を生み出し、分派した。また、第二次世界大戦後は錦琵琶の鶴田錦史(きんし)が鶴派をおこすなど多くの流派が生まれ、今日、薩摩琵琶は正派、錦心流、錦琵琶の3派に大きく分かれている。
 古来の薩摩琵琶は、全長約91センチメートルで雅楽の楽(がく)琵琶よりやや小ぶりであるが、海老尾(えびお)はすべての琵琶類と比べて大きい。腹板は凸面をなし、柱(ちゅう)は非常に高くて、撥(ばち)は扇を広げたように広い(最大約30センチメートル)。正派と錦心流の琵琶は4弦4柱で、錦琵琶と鶴派では5弦5柱のものも使用する。楽器を立てて構え、弾奏する。もっとも目だつ弾法は、撥で弦を鳴らして腹板にあてる「打ちバチ」で、大きい音を出す打楽器的効果をあげる。
 音楽的には歌いながら楽器で伴奏せず、歌詞の句と句の間だけ奏するのが本来の形である。曲には『桜井の駅』『白虎隊(びゃっこたい)』『城山(しろやま)』などの悲壮な戦争物語を語るものが多い。なお歌詞のない秘曲「門(かど)琵琶」があり、近年これを復興する試みがある。[シルヴァン・ギニアール]

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事典 日本の地域ブランド・名産品の解説

薩摩琵琶[祭礼・和楽器]
さつまびわ

九州・沖縄地方、鹿児島県の地域ブランド。
鹿児島市で製作されている。薩摩藩士の文武奨励を目的として薩摩藩が琵琶歌を奨励したことで普及した。薩摩隼人質実剛健気風にあった男性的な楽器で、その弾奏法は独特。明治維新後には東京を中心に全国に広まった。桑の木を材料とし、全体は漆を用いて仕上げられる。鹿児島県伝統工芸品。

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世界大百科事典内の薩摩琵琶の言及

【日本音楽】より

…箏曲界に次いで洋楽の影響を多く受けたのは長唄である。なお,この期の邦楽界に新しく加わったものとしては,薩摩琵琶,筑前琵琶,都山流(とざんりゆう)尺八,浪花節(なにわぶし)などがあげられる。薩摩琵琶は仏教寺院の法要琵琶であった盲僧琵琶をもとに室町末期から武家の教養音楽として薩摩藩に発達したものであるが,明治維新による薩摩出身者の東京進出により,郷土芸能であった薩摩琵琶も東京に紹介され,全国的な芸能になった。…

【琵琶】より

…こうした盲僧琵琶の音楽的活動は筑前盲僧と薩摩盲僧に大別されてわずかに現存し,その傍系の山口県や熊本県の小型の笹琵琶を使う肥後琵琶はほとんど絶えた。(3)薩摩琵琶 このように盲僧琵琶はすでに世俗化の傾向を示したが,別の世俗的な琵琶楽を近世に生み出すきっかけをも提供した。それは16世紀後半に始まった薩摩琵琶と19世紀末からの筑前琵琶を代表とするいわゆる〈琵琶歌〉である。…

【盲僧】より

…外来楽器の琵琶を奏する盲僧は,すでに奈良時代には存在したと思われるが,中世初頭に《平家物語》を語る平曲を表芸とする一団が活躍して地神経や荒神経を読んで地神や竈神(かまどがみ)をまつる盲僧から分離した。筑前琵琶の源流をなす筑前盲僧は,唐から直接日本に伝来した直系を称し,薩摩琵琶は鎌倉時代初期に島津氏に従って薩摩に下った盲僧の系譜を伝える。かつて地鎮祭(じちんさい)や荒神祓,土用経(どようきよう)にまわった盲僧の姿は,九州一帯や長門,石見,大和などでも見られたが,現在では国東(くにさき)半島や北九州市,対馬の一部に残るにすぎない。…

※「薩摩琵琶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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