十二神将それぞれに付記した本地名、十二支名は、本地垂迹説および十二支の思想との接合によって対応・配当されるもので、薬師経自体では触れていない。十二支神は昼夜一二時を護持するという理由から対応させる。十二支がないものを古様、あるものを新様という。
〈薬師経〉を信奉する者を守る12の夜叉神将のことで,十二夜叉大将,十二神王などとも呼ばれる。薬師如来の眷属(けんぞく)であり,薬師如来像の侍者として表現される。12尊の名称は諸説あるが,玄奘訳《薬師瑠璃光如来本願功徳経》には宮毘羅(くびら),伐折羅(ばさら),迷企羅(めきら),安底羅(あんてら),頞儞羅(あんにら),珊底羅(さんてら),因達羅(いんだら),波夷羅(はいら),摩虎羅(まこら),真達羅(しんだら),招杜羅(しやとら),毘羯羅(びから)と記される。12という数が中国において十二支と結びついたと推定され,やがて十二神将は昼夜12時をたえず護ると信じられるようになった。形像は甲冑をつけて武器を手に持つ武人の像が一般的であるが,日本の平安時代以後の像の中には,武人の姿の頭上に十二支獣の一つをのせたり,頭部を十二支獣とした獣頭人身の武将像であったり,武将像の台座に十二支獣の一つを表現した例などが知られる。十二支獣は宮毘羅大将を子(ね)として上述の順に毘羯羅大将まで当てはめる説や,宮毘羅大将を亥(い)とする説,さらには寅(とら)とする説などがある。作例は,中国においては敦煌莫高窟220窟(7世紀)の北壁《薬師浄土変相図》や大英博物館蔵の敦煌絵画《薬師浄土図》(9世紀)には武装した十二神将が描かれる。日本では彫刻の作例が多く伝えられ,新薬師寺の11体(8世紀,塑造,国宝)や広隆寺の12体(1064,伝長勢作,国宝)はともに武将形の像で,しかも十二支獣は表現されていない。しかし以後の平安時代の作例からは,頭上に十二支獣の頭部を表現した例が多くなる。図像集《覚禅抄》には獣頭人身の像や十二支獣の一つを台座にした像が収められているが,その現存作例はまれである。なお朝鮮の新羅時代の墳墓の掛陵(けりよう),金庾信墓(きんゆしんぼ)などには,浮彫で獣頭人身の武将像が12体表現され,十二支獣の像とされているが,十二神将像との関係はまだ検討されていない。
執筆者:関口 正之
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薬師如来(やくしにょらい)の12の眷属(けんぞく)(または分身)で、8万4000あるうちの上首に位置する。十二薬叉(やくしゃ)(夜叉(やしゃ))大将ともいう。『薬師本願功徳経(ほんがんくどくきょう)』を誦持(じゅじ)する者を守り、その出現のようすは薬師如来の12の大願に順応して現れるという。すなわち、(1)宮毘羅(くびら)、(2)伐折羅(ばさら)、(3)迷企羅(めいきら)、(4)安底羅(あんちら)、(5)摩儞羅(まにら)、(6)珊底羅(さんちら)、(7)因陀羅(いんだら)、(8)婆夷羅(ばいら)、(9)摩虎羅(まこら)、(10)真達羅(しんだら)、(11)招杜羅(しょうとら)、(12)毘羯羅(びから)の大将で、いずれも憤怒形である。名称は前述の『薬師経』に、身色や持ち物は『七仏本願経儀軌供養法(しちぶつほんがんきょうぎきくようほう)』に基づく。経典では十二支と関係はないが、昼夜12時を護持するという理由から十二支をシンボルとして付属させる。基本的には、十二支がないものを古様(こよう)、あるものを新様という。図像では醍醐寺(だいごじ)本『十二神将図』、彫刻では新薬師寺の塑像(天平(てんぴょう)時代、宮毘羅を除く11躯(く)は国宝)が最古。ほかに広隆寺の木像(平安後期、国宝)や興福寺の木像(鎌倉時代)および板彫(平安後期、ともに国宝)、画像では高野山(こうやさん)桜池院(ようちいん)の『薬師十二神将』が著名。人身獣頭の像もある。
[真鍋俊照]
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薬師如来を信仰し,「薬師経」を保持する行者を守護する12の神将。宮毘羅(くびら)・伐折羅(ばさら)・迷企羅(めきら)・安底羅(あんてら)・頞儞羅(あんにら)・珊底羅(さんてら)・因陀羅(いんだら)・波夷羅(はいら)・摩虎羅(まこら)・真達羅(しんだら)・招杜羅(しゃとら)・毘羯羅(びから)の各大将。中世以降はそれぞれに本地仏と十二支があてられ,広く信仰された。現存の造形としては,京都広隆寺や奈良新薬師寺の十二神将,奈良興福寺の板彫十二神将などが有名。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…薬師は菩薩時代に12の大願を立て(その中に自分の名を聞く者を不具や病気から救うという項目がある),仏となって東方の浄瑠璃世界の主となり,日光菩薩,月光菩薩(日光・月光)を従えている。死の病人を救うために薬師如来に祈る供養法(続命法)が行われ,また薬師経を唱える信者を十二神将が守護するとも説かれる。別に七仏薬師(しちぶつやくし)の伝承があり,これによると東方に次々に如来がおり,最も遠い第7の如来が薬師であるとされる。…
※「十二神将」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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