脇侍 (きょうじ)
中尊の左右,あるいは前後に侍するもの。脇士,挟侍,夾侍とも書き,脇立(わきたち),〈わきじ〉ともいう。その数は多くは二尊で,中尊と合わせて三尊像というが,四尊,八尊,十二尊,それ以上数十尊に及ぶこともある。この脇侍に対しては仏典でもこれを規定し,阿弥陀如来ではその左辺に観音菩薩,右辺に勢至菩薩を配することを《観無量寿経》で説く。釈迦如来では目連は左に侍し,阿難は右に在りと説かれ,釈迦画像ではその下の左辺に文殊騎獅像,右辺に普賢騎象像を画作せよと《陀羅尼集経》で説いている。釈迦像に脇侍を付す例はインドのマトゥラーの石彫像以来認められる。このほか薬師如来では日光・月光二菩薩,あるいは薬王・薬上菩薩が脇侍とされ,般若菩薩には梵天・帝釈の二天,不動明王には制多迦・衿迦羅の二童子,または八大童子が配される。天台の常行堂の本尊は宝冠阿弥陀を中尊とし,法利因語の四菩薩を四周に安置し,また薬師如来に十二神将,釈迦如来に十大弟子を配する例もある。
執筆者:光森 正士
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脇侍
きょうじ
「わきじ」とも。脇士・挟侍とも。中尊の左右や周囲に侍するものをいう。中尊が阿弥陀如来の場合は左に観音菩薩,右に勢至(せいし)菩薩を配することが経典に定められている。造形的には,両像が腰をかがめ,あるいは膝をつき,上体を軽く前に傾けることによって,来迎(らいごう)のさまを効果的に表すことができる。
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脇侍【きょうじ】
〈わきじ〉ともよみ,脇士,挟侍とも書く。仏像で本尊の両脇に侍するもの。釈迦・阿弥陀・薬師などの各如来の両脇に侍する文殊・普賢,観音・勢至,日光・月光(がっこう)の各菩薩,不動明王の両脇に侍する矜羯羅(こんがら)・制【た】迦(せいたか)の2童子など。
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世界大百科事典(旧版)内の脇侍の言及
【脇侍】より
…その数は多くは二尊で,中尊と合わせて三尊像というが,四尊,八尊,十二尊,それ以上数十尊に及ぶこともある。この脇侍に対しては仏典でもこれを規定し,阿弥陀如来ではその左辺に観音菩薩,右辺に勢至菩薩を配することを《観無量寿経》で説く。釈迦如来では目連は左に侍し,阿難は右に在りと説かれ,釈迦画像ではその下の左辺に文殊騎獅像,右辺に普賢騎象像を画作せよと《陀羅尼集経》で説いている。…
【仏像】より
…中部ジャワでは大乗仏教徒であった[シャイレンドラ]朝の諸王によって8~9世紀に造形活動は頂点に達し,典雅で迫力のある彫刻を生んだ。なかでも[チャンディ・ムンドゥット]の本尊である高さ約3mの仏倚座(きざ)像とその脇侍(きようじ)菩薩は均整のとれた体軀に力がみなぎり,東南アジアの仏像の最高傑作と称賛され,その外壁の密教系の浮彫菩薩像もすぐれている。また[ボロブドゥール]にはもともと504体もの傑出した等身大の仏座像があり,回廊壁面の長大な浮彫の芸術性の高さも注目される。…
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