食の医学館 「薬草治療は世界の潮流」の解説
やくそうちりょうはせかいのちょうりゅう【薬草治療は世界の潮流】
こうした、昨今のハーブブームは、じつは日本にかぎったことではありません。欧米諸国のあいだでも、ハーブに対する注目度は、確実に上昇しているのです。
私たち日本人は、病気の治療というと、すぐに現代医学に基づいた治療法を思い浮かべます。しかし、世界的な医療の趨勢(すうせい)をみてみると、現代医学による治療は全体の3割程度でしかありません。残りの約7割は、ハーブや薬草を用いた伝統的な治療法です。そして、こうした伝統医療のもつ重要性に、最近、あらためて大きな注目が集まるようになっています。
WHO(世界保健機関)でも、現代医学による治療は、コスト面で非常に負担が大きいうえ、医師などの人材も不足していることから、現代医学主体の方向性を転換。インドのアーユルヴェーダやイギリスのホメオパシーなどといった、薬草を主体とする伝統医療を重視するようになってきました。たとえば、インドネシアやアマゾンなどの治療では、現地で伝統的に医療を受けもってきたシャーマン(霊媒師、巫女(みこ))たちに、薬草を用いた医療法を教え、これを現地医療の柱にするという方針をとっています。
また、先進医療の中心地であるアメリカでも、現代医学の薬はコストがかかって高価なうえ、副作用の問題も少なくないことから、ハーブや薬草を用いた代替医療に注目が集まっています。
こうした世界的なハーブ医療ブームのなかで、とくに注目を集めているのが、以下にあげるハーブです。
◇ゴールデンシール
おもな効用・利用法/カタル性疾患、月経障害、軽度の坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)、リウマチの痛み、筋肉痛の治療薬として使用。洗眼薬の原料にも用いられる。
◇エゾウコギ
おもな効用・利用法/興奮、強壮、食欲増進、腰部の疼痛(とうつう)緩和、リウマチの治療薬として使用。最近では、体調をととのえ、集中力を高める作用も実証されている。
◇マリアアザミ
おもな効用・利用法/近年、肝臓疾患への治療効果が確認されている。肝疾患、黄疸(おうだん)、胆石(たんせき)、腹膜炎(ふくまくえん)、せき、気管支炎、静脈瘤(じょうみゃくりゅう)、子宮のうっ血の治療に使用。
◇ノコギリヤシ
おもな効用・利用法/種子は膀胱(ぼうこう)、尿道、前立腺(ぜんりつせん)の炎症治療に使用。果実は栄養価が高く、消耗性疾患や気管支炎の治療のほか、利尿剤にも用いられる。
このほかに、近年注目の薬草には、「エキナシア」や「セントジョーンズウォート」、「キャッツクロー」、「イチョウ葉(イチョウ葉エキス)」などがあります。