大坂の井上真改,津田越前守助広らとともに江戸時代を代表する刀工。長曾禰興里(おきさと)と名のり,入道して古鉄,虎徹と称した。とくに切れ味の鋭いことでは全刀工中第一といわれ,《新刃銘尽》《古今鍛冶備考》をはじめとする江戸時代の刀剣書に高く評価されている。実際,〈三ッ胴截断〉〈二ッ胴切落〉〈石灯籠切〉などと切れ味を誇る添銘した作が数多く現存している。もともと越前国福井の甲冑師であったが,明暦(1655-58)の初め,50歳を過ぎてから江戸に出て刀工に転じており,〈延宝五年(1677)二月吉祥日〉紀の作をもって終わっている。その師については古来諸説あるが,今日では和泉守兼重とするのが定説である。作風は年代によって多少変化するが,精美な地鉄,数珠刃(じゆずば)と称される頭の丸い互(ぐ)の目が連れた刃文に真価があらわれており,興正,興久,興直らの門人,また法城寺一派,3代下坂康継など,以後の江戸の刀工に強い影響を与えた。
執筆者:原田 一敏
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