蛸配当(読み)タコハイトウ(英語表記)bogus dividend

デジタル大辞泉 「蛸配当」の意味・読み・例文・類語

たこ‐はいとう〔‐ハイタウ〕【×蛸配当】

《蛸は空腹のときに自分の足を食うといわれるところから》株式会社において、配当しうる利益がないのに決算時の操作によって計算上の利益を生み出し、配当を行うこと。違法配当たこ。たこはい。蛸足配当

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精選版 日本国語大辞典 「蛸配当」の意味・読み・例文・類語

たこ‐はいとう‥ハイタウ【蛸配当】

  1. 〘 名詞 〙 ( 蛸は空腹のとき自分の脚を食べるという俗信から ) 配当するだけの利益をあげていない会社が架空の利益を計上して資産から不当に株主へ配当すること。蛸配。蛸。〔国民経済講話‐乾(1917)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「蛸配当」の意味・わかりやすい解説

蛸配当 (たこはいとう)
bogus dividend

違法配当のことで,株式会社・有限会社において,配当可能利益がないにもかかわらず,利益配当をすることをいう。略してタコ配ともいう。商法上,株式会社は,貸借対照表上の資産額から負債額を差し引いた純資産額から,さらに資本金・法定準備金などの控除をして算出される配当可能利益を超えて,利益配当(配当)することはできない(商法290条1項,有限会社につき有限会社法46条1項)。これに違反した利益配当は蛸配当となる。タコは自分の足を食うという俗説から,このような違法配当は自分の資本を食っているようなものだというたとえで蛸配当という。通常,流動資産の評価額の水増しや不十分な減価償却などのように資産の過大評価をしたり,あるいは負債を過小評価するなどして,いわゆる粉飾決算をし,それによって純資産額を水増しして蛸配当をする。会社の業績が非常に悪化していることを隠すために粉飾決算をし蛸配当をする例が多く,このような場合には,それが会社の倒産につながることも多い。

 このような違法配当は無効であるから,会社は配当を受けた株主に対しその返還を請求できるし,会社債権者も直接株主に対して会社に返還するよう請求できる(商法290条2項)。しかし,実際問題として多数の株主に返還を求めることは困難なので,違法配当を提案した取締役にも,会社に対し,違法配当額を賠償する責任を負わせている(266条1項1号)。また刑罰も科されている(489条3号)。しかし,会社が取締役に対してこの責任を追及した例はほとんどなく,この責任追及は,会社が会社更生の事態におちいったときに,管財人の手によって行われた例があるにすぎない。会社更生手続の中で行われた有名な事件に,山陽特殊製鋼事件がある。この事件では,取締役・監査役に対し,違法配当額のほか違法な重役賞与の支給分も合わせて約16億円の損害賠償が認められた(1966年判決)。その後にも同様な事件として興人事件(1977年判決)などがある。
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百科事典マイペディア 「蛸配当」の意味・わかりやすい解説

蛸配当【たこはいとう】

会社が,配当可能利益がないのに利益配当をすること。会社法上は違法配当という。〈たこ配〉と略すことが多い。ふつう資産の過大評価,負債の過小評価によって行われる。このような行為は無効とされ,会社は株主・社員にその返還を,会社債権者も会社への返還を請求できる。配当議案を提出した取締役も填補弁償責任を負い,刑罰を受ける。→粉飾決算

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蛸配当」の意味・わかりやすい解説

蛸配当
たこはいとう

違法配当」のページをご覧ください。

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