管財人(読み)カンザイニン

デジタル大辞泉 「管財人」の意味・読み・例文・類語

かんざい‐にん〔クワンザイ‐〕【管財人】

破産会社更生和議の手続きで、財産を管理する人。裁判所によって選任される。→破産管財人更生管財人

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精選版 日本国語大辞典 「管財人」の意味・読み・例文・類語

かんざい‐にんクヮンザイ‥【管財人】

  1. 〘 名詞 〙 他人の、特に破産財団、和議手続中債務者などの財産を管理する人。管財者。
    1. [初出の実例]「分散者の管財人と為り又は会社及び共有財産を管理するの権」(出典:太政官布告第三六号‐明治一三年(1880)七月一七日)

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改訂新版 世界大百科事典 「管財人」の意味・わかりやすい解説

管財人 (かんざいにん)

広義では,他人の財産を管理する人の意味で,他人との契約,法律の規定または裁判所の選任によってその地位につく者をすべて含むが(たとえば,不在者の財産管理人(民法25条),相続財産管理人(民法918,952条)など),今日では,倒産に関する法手続において倒産処理事務を遂行する機関,またはその機関に任ずるため裁判所によって選任された人を指すのが一般である。この意味での管財人には,破産管財人,和議管財人,更生管財人の3者がある。

 破産管財人は破産手続の中心機関で,破産財団を管理し,これを換価して債権者に平等に配当することがその職務である。そのための権限としては,(1)破産財団の管理処分(破産法7条),(2)未解決の法律関係の処理(破産法59,64条,民法621,631,642条),(3)否認権行使(破産法72条以下),(4)訴訟追行(162条),(5)破産債権の調査(233条),(6)配当の実施(256条以下)等に関する権限をもつ。破産管財人は破産宣告と同時に裁判所によって選任される(142,157条)。弁護士が選任されるのが通常である。破産管財人はその職務を行うに当たり善良なる管理者としての注意義務を負う(164条)。破産管財人は裁判所の監督に服し,解任されることがある(161,167条)。破産管財人は予納金または破産財団の中から裁判所の定める額の費用の前払いおよび報酬を受ける(166条)。破産管財人の法的地位については,職務説,代理説(債権者代理説,破産者代理説),破産財団代表説,管理機構法人説等の学説対立がある。

 和議管財人の職務は和議手続中の債務者を監督することである。破産管財人と違って債務者の財産の管理処分権を有しない。その権限としては,(1)債務者の行為の監督(和議法32条),(2)金銭の収支(34条),(3)財産調査(36条),(4)扶助料の決定(35条)等の権限しかない。和議管財人の選任,監督,注意義務,報酬等については破産管財人に関する多くの規定が準用されている(27,39条)。

 更生管財人は,更生会社の事業の経営を維持しつつ,更生計画を立案・確定・実行することによって会社の再建をはかる更生手続の中心機関である。その権限としては,(1)更生会社の事業の経営,財産の管理・処分(会社更生法53条),(2)未解決の法律関係の処理(103条),(3)否認権の行使(78条以下),(4)取締役等に対する責任の追及(72条以下),(5)訴訟追行(96条),(6)更生債権・更生担保権の調査(137条),(7)更生計画の立案(189条),(8)更生計画の実行(247条)等に関する広範な権限を有する。更生管財人には弁護士のほか実業家が選任されることが多い。その選任,監督,注意義務,報酬等に関しては,破産管財人と同様の規定が置かれている(46条,98条の3,98条の4,285条)。
会社更生法 →破産 →和議
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「管財人」の意味・わかりやすい解説

管財人
かんざいにん

一般には他人の財産の管理人をいう。法律上重要なものとして、破産手続における破産管財人、会社更生手続における更生管財人、民事再生手続における再生管財人(再生債務者の事業の再生のためにとくに必要があると認められるときに、選任される)がある。いずれも、それぞれの手続の開始時に(民事再生手続における管財人については、手続開始決定後の場合もある)裁判所によって選任され(1人あるいは数人)、とくに、破産管財人、更生管財人は手続の中心的役割を果たす機関である。その職務内容は、破産管財人については、破産財団の管理・処分、換価、破産債権の調査・確定、配当などであり、更生管財人については、会社の事業の経営、会社財産の管理・処分、更生計画案の作成、更生計画の遂行などである。再生管財人については、再生債務者の業務の遂行、財産の管理および処分などである。いずれも職務の執行は裁判所の監督のもとに行い、善良な管理者としての注意義務を有する。

[本間義信]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「管財人」の意味・わかりやすい解説

管財人
かんざいにん

(1) 更生管財人 trustee in reorganization 会社更生手続きにおいて更生会社の財産の管理,事業の経営,更生計画の立案などを担当する者。更生手続き開始決定と同時に裁判所によって管財人が選任され,以後は事業の経営,財産の管理および処分の権限が管財人に専属的にゆだねられ,更生計画案の作成および遂行などを行なう。管財人は裁判所の監督のもと,善良な管理者の注意義務をもって職務を行なうべきこととされており,この義務を怠れば損害賠償責任が課される。また重大な理由がある場合には,裁判所は管財人を解任することができる。会社更生法上は管財人の語を使用しているが一般には更生管財人と呼ばれる。

(2) 破産管財人 trustee in bankruptcy 破産財団を代表し,財団の管理,換価,配当などを行なう機関。破産管財人の地位については,職務説あるいは代理説などの論争があったが,現在では,管財人を破産財団という独立の法人の代表機関とする考え方 (破産財団代表説) ,および破産者の財団を管理する機構とする考え方 (管財人管理機構説) が有力。管財人は,破産宣告と同時に裁判所によって選任され,その監督を受ける。

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世界大百科事典(旧版)内の管財人の言及

【会社更生法】より

…裁判所は更生手続開始の原因(債務を弁済すれば事業に支障をきたす状態,または破産原因事実の生ずるおそれ)の有無および更生の見込みなどを審理するが(30,38条),その際公認会計士を調査委員に選任して調査させることも多い(101条)。手続を開始する場合は,開始決定と同時に更生管財人を選任する(46条)。更生管財人は会社の事業経営権および財産の管理処分権を一手に収める(53条)。…

【倒産】より

…これは消費者金融によって破綻(はたん)した個人が破産制度を利用しはじめたことによるもので,かねてアメリカにおいて顕著にみられた現象であり,免責制度とあいまって,日本においても破産の債務者救済制度としての性格が明らかとなりつつあるといえる。破産者に財産がある場合には破産管財人(原則として弁護士)が選任されて財産を処分し,換価金を債権者に按分弁済(配当)するが,通常その率はきわめて低い。 和議は財産を換価清算することなく債権者の譲歩によって再建案(和議条件)を策定することを骨子とする。…

※「管財人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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