衆議院議員選挙法(読み)しゅうぎいんぎいんせんきょほう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衆議院議員選挙法」の意味・わかりやすい解説

衆議院議員選挙法
しゅうぎいんぎいんせんきょほう

明治 22年法律3号。 1890年の最初の帝国議会総選挙にそなえて,89年2月 11日に議院法とともに公布された選挙法。小選挙区制をとり,25歳以上の男子で,居住する府県内で1年以上直接国税 15円以上 (所得税なら3年以上) を納付している者に選挙資格制限した。被選挙人は同様の納税資格をもつ 30歳以上の男子とされた。 1900年に第2次山県有朋内閣のもとで改正され,1府県を1区,人口3万人以上の都市を独立区とする大選挙区制がとられ,納税資格は営業税を加えたうえ 10円に引下げられた。 19年原敬内閣は小選挙区制を復活,選挙人の居住資格を6ヵ月に短縮,納税資格は3円とした。 25年加藤高明内閣が男子普通選挙制を実現させ,選挙人資格から財産居住制限をほぼ取除き,1府県をいくつかに分割して,中選挙区制を採用。 45年4月には朝鮮台湾に居住する 25歳以上の男子で,かつ直接国税を 15円以上納めている者が選挙人に含まれた。第2次世界大戦後の 45年 12月の改正では,男女 20歳以上に選挙権,25歳以上に被選挙権が与えられ,府県を1つか,2つの選挙区とする大選挙区制がとられたが,47年には中選挙区制がとられるようになった。 50年に公職選挙法に取って代られた。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「衆議院議員選挙法」の解説

衆議院議員選挙法
しゅうぎいんぎいんせんきょほう

大日本帝国憲法のもとで衆議院議員の選挙について規定した法律。1889年(明治22)2月11日に憲法とともに公布。選挙権者は直接国税(地租と所得税)15円以上を納める満25歳以上の男子(被選挙権者は同30歳以上)で,約45万人,内地人口の1.1%強。議員定員は300で,小選挙区を原則とし,記名捺印投票方式。90年に最初の総選挙実施。1900年の改正で,選挙権は納税額10円以上に引き下げ,被選挙権の納税資格は撤廃,大選挙区制(都市は独立選挙区),無記名投票となった。19年(大正8)原内閣のとき,選挙権は納税額3円以上に引き下げられ,有権者は約307万人に拡大,再び小選挙区制となる。この頃から普通選挙要求の運動が高まり,25年加藤高明内閣のとき,男子の普通選挙(選挙権における納税資格の撤廃)が実現し,有権者は1240万人をこえた。第2次大戦後の45年(昭和20)に大幅に改正され,婦人参政権が認められ,選挙権・被選挙権の年齢が各5歳引き下げられた。50年5月1日,公職選挙法の施行により廃止。

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旺文社日本史事典 三訂版 「衆議院議員選挙法」の解説

衆議院議員選挙法
しゅうぎいんぎいんせんきょほう

衆議院議員の定員・選挙資格・選挙方法などを定めた法律
1889年公布。選挙権は直接国税15円以上を納める25歳以上の男子(被選挙権は30歳以上の男子)に与えられ,有権者は人口の1.1%に過ぎなかった。その後しだいに制限は緩和され,1900年の改正では10円以上,'19年3円以上に引き下げられ,'25年普通選挙法により納税資格が撤廃され,25歳以上のすべての男子に選挙権が与えられた。婦人参政権は第二次世界大戦後与えられ,'45年12月の改正で20歳以上の男・女に選挙権,25歳以上に被選挙権が与えられた。'50年公職選挙法施行により廃止。

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世界大百科事典(旧版)内の衆議院議員選挙法の言及

【公職選挙法】より

…1950年に,衆議院議員選挙法(1925公布),参議院議員選挙法(1947公布)を一本化し,さらに地方公共団体の長および議員に関する選挙法を統合して制定された法律(〈公選法〉と略称)。公選法の目的は,日本国憲法にのっとり,衆議院議員,参議院議員ならびに地方公共団体の長および議員を公選する選挙制度を確立し,その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明かつ適正に行われることを確保し,もって民主政治の健全な発達を期することにある(1条)。…

※「衆議院議員選挙法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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