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行動科学 behavioral science

デジタル大辞泉の解説

こうどう‐かがく〔カウドウクワガク〕【行動科学】

人間の行動を実証的に研究し、その法則性を明らかにしようとする科学の領域。心理学社会学人類学精神医学などが含まれ、総合化・学際化などを特徴とする。

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百科事典マイペディアの解説

行動科学【こうどうかがく】

自然・社会両科学にまたがって,人間の行動を予測・制御しようとする経験科学。1950年前後から米国を中心に発展。中核に社会学心理学が位置し,社会心理学政治学(選挙などの政治行為),経済学(消費行動など),文化人類学(文化と行動),地理学生態学(自然と人間行動),生理学(行動の生理的基礎),精神医学(異常行動),言語学(言語行動と思考様式),ゲーム理論などを含む。
→関連項目行動療法ソフトサイエンス

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ナビゲート ビジネス基本用語集の解説

行動科学

人間の行動を研究対象とする科学。心理学・社会学・人類学・生理学・精神医学・政治学・経済学・経営学歴史学などの諸科学の境界を超え、人間行動についての統合的な解明を目指す。アメリカの心理学者J.G.ミラーら、シカゴ大学の研究者たちによって唱えられ、1950年代初頭、フォード財団が研究を支援した。 経営分野においては、組織の意思決定過程や人間関係に焦点が当てられ、マネジメント理論に大きな影響を及ぼした。

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世界大百科事典 第2版の解説

こうどうかがく【行動科学 behavioral science】

人間行動に関する研究は,まず,C.ダーウィンによる生物的人間の発見にはじまる。そこで考えられた人間の自然環境への適応機能をあつかうW.ジェームズ機能心理学から,刺激‐反応体としての生理心理的な人間行動に対象を限定するJ.B.ワトソンの古典的行動主義の心理学が生まれた。その後,行動研究は,C.L.ハル,E.C.トールマンなどによって精密化され,1940年代には新行動主義の名のもとに,行動理論が体系化されはじめた。

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大辞林 第三版の解説

こうどうかがく【行動科学】

人間行動の一般法則を科学的に見いだそうとする学問。心理学・社会学・人類学・経済学・政治学・精神医学などの諸科学の学際協力によって総合的に解明しようとする立場に立つ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

行動科学
こうどうかがく
behavioral sciences

人間行動の一般法則を体系的に究明しようとする新しい科学分野。 1950年前後からアメリカを中心に発展,社会学,心理学,文化人類学を中心に,社会心理学,経済学,生理学,精神医学,言語学などが関連する。数理モデル,実験モデルなどの手法が導入され,新たにサイバネティクス情報理論とも密接に関連するようになった。行動科学の立場からマネジリアル・グリッド,目標管理などの新しい管理手法が考え出されているほか,感受性訓練組織開発などの教育,訓練手法にも大きな影響を与えている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

行動科学
こうどうかがく
behavioral science

人間行動を、(1)総合的にとらえ、(2)厳密な科学的手法によって観察・記録・分析し、(3)その法則性を明らかにすることによって予測可能性を高め、(4)社会の計画的な制御や管理のための技術を開発しようとする、科学の動向を総称する。この動向は、人類学、心理学、社会学を中核として、1950年ごろにアメリカでおこり、その後、政治学、経済学、法律学、言語学などのうち、人間行動を扱う分野にも強い影響を与えた。その特徴を要約すれば、研究の「総合化」「厳密化」「学際化」「応用科学的志向」などの点をあげることができる。[大塩俊介]

歴史的背景

広義に人間、あるいは人間行動の研究を目ざそうとする問題意識は、いうまでもなく19世紀ヨーロッパに展開された人類学、心理学、社会学などの諸理論のうちにみることができる。今日の行動科学の芽はすでにそのなかに存在していた。しかしヨーロッパの、どちらかといえば思弁的観念は、アメリカの科学的文化の土壌(経験主義と実用主義)に移植されると、組織的なデータの収集に基づく諸仮説という形に置き換えられ、またそれは問題解決に役だつ知見であるはずだ、と考えられるようになった。この動向は、一方で研究分野や研究主題の分化・専門化、あるいは断片化という傾向(学会の発表部門数の急速な増加)を生むと同時に、学問間の協力の増大、総合化を促すことになる。たとえば、言語学は記号論、論理学、コミュニケーション論などの分野と結び付き、権力や権威の構造・作用に関する研究は、政治学以外でも、社会心理学、社会学、人類学の重要な研究主題となった。政治心理学や政治社会学、経済心理学や経済人類学、法社会学、社会精神医学、人間生態学などの発展は、モザイク的な学問間の溝を埋める新しい分野であり、今日の学際的研究の萌芽(ほうが)として、諸科学の統合という傾向を示してきた。
 第二次世界大戦後、アメリカの文化人類学者たちによって行われた「文化とパーソナリティー」に関する諸研究は、とくにこの傾向を示す好例であった。この研究は精神医学、心理学、社会学との交流の成果であったが、この流れのなかから、これら諸科学を統合して人間行動と文化の諸条件との関連を研究する、人間学、あるいは人間科学の確立を主張する立場も現れた。またこの研究主題は、異文化間の人間相互の理解を進めるうえで重要な実用的意義をもつと主張された。
 以上の動向は、やがて行動科学の主張を生む背景となっている。[大塩俊介]

行動科学の形成

「行動科学」ということばは、1940年代の末に心理学者ミラーJames G. Millerを中心としたシカゴ大学の科学者グループによって使われ始めた。ミラーは「行動科学の一般理論に向けて」と題する論文のなかで、人間行動の厳密な科学的研究を推進するためには、生物科学から社会科学を網羅した総合的な研究態勢が必要であるとし、これに含まれる学問として、人類学、生化学、生態学、経済学、遺伝学、地理学、歴史学、言語学、数学、神経病学、薬学、生理学、政治学、精神医学、心理学、社会学、統計学、動物学の18領域をあげている。しかし彼の主張の動機には、1950年に創設された国立科学財団National Science Foundationに非自然科学部門からも大規模プロジェクト研究の助成費を得るための、政治的な科学運動という一面があった。したがってその定義もややあいまいであった。「行動科学」の名称をむしろ一般化したのは、1950年代にフォード財団が行動科学計画Behavior Science Programによって、この分野に多額の研究助成を行ってからである。同計画の主任であったベレルソンBernard Reuben Berelsonは、アメリカの声(VOA)放送大学の「行動科学シリーズ」のなかで、人類学、心理学、社会学のうち、考古学、形質人類学、視覚や聴覚の心理学を除き、これに政治学、法学、精神医学、地理学、生物学、経済学、歴史学のうち人間行動に関心をもつ領域を加えたもの、とかなり明確に行動科学の範囲を限定した。行動科学の名称はそれ以来急速に広まり関係領域に広範な影響を与えるに至った。[大塩俊介]

展開

厳密科学の方法の行動研究への導入を目ざす行動科学は、まず行動主義心理学の伝統をもつ心理学者が主導した。すでに多くの行動に関するデータの蓄積をもつ社会学や文化人類学もすぐにこれに加わった。哲学的、歴史的、制度論的な主題を扱ってきた政治学は、やや遅れ、「行動科学革命」といわれた衝撃を受けた。法学、経済学、言語学分野の一部にも行動科学の影響が浸透してゆく。研究主題も多彩となり、組織や経営システムの行動分析、世論、流行、政治的社会化、投票行動、政策や立法の形成過程、裁判所における判決の決定過程、言語行動、消費行動、さらには国際政治システムにおける勢力関係や紛争の分析などが盛んに行われた。リッカートRensis Likertの『経営の行動科学』(邦訳1964)や『組織の行動科学』(邦訳1968)、カトーナGeorge Katonaの『消費者行動』(邦訳1964)などはその一部である。
 行動科学の展開に寄与した重要な問題点としては、まず第一に観察のための方法モデルや理論モデルの発展がある。グループ・ダイナミックス(レビン)、相互作用のカテゴリー・システム(ベールズRobert Freed Bales)、交換理論(ホマンズ)、行為システムや社会システム・モデル(T・パーソンズ)などは、行動研究の理論的枠組みや観察の方法論に関して大きな寄与を果たした。
 第二にデータの分析に関する統計学的方法や数理モデルの導入がある。標本抽出法、統計学的解析法や検定法、ゲーム理論、一般システム論、サイバネティックス、オペレーションズ・リサーチ、シミュレーション、など。
 第三に大型で高性能なコンピュータが急速に開発され、大量のデータを高速で処理することが可能となった。
 第四に膨大な数量的データの収集と蓄積、および共同利用のための施設としてのデータバンク、データライブラリーが、1960年代から主要な大学に設立され始めた。
 第五に学際的な行動研究を可能にする新しい制度が、大学の教育や研究機関として整備されてきた。ハーバード大学の社会関係学部、エール大学の人間関係研究所、シカゴ大学の人間発達研究センターはその好例である。
 第六に専門誌の発刊。『行動科学』Behavioral Science(1956創刊)、『紛争解決ジャーナル』The Journal of Conflict Resolution(1957創刊)などに成果が続々と発表されている。[大塩俊介]

現状と問題点

行動科学の社会工学的志向(予測と制御)は、関心の対象をしだいに環境問題、都市問題、国際政治問題へ向けるようになり、大規模なプロジェクト研究もますます多くなっている。同時に学際的共同研究を強調する環境科学、政策科学、管理科学などの呼称が、当初の統一科学志向の熱気を失いつつある「行動科学」にとってかわる傾向もみられる。とくに政治学の分野では、行動科学は、応用科学的効用もまだ未熟であり、膨大なコストをかけてつまらぬ仮説しか並べていないという批判も行われている。この批判には価値の問題もかかわっているが、それにもかかわらず、この研究動向は今後も進んでゆくと予想される。[大塩俊介]
『B・ベレルソン他著、佐々木徹郎訳『行動科学入門』(1962・誠信書房) ▽B・ベレルソン、G・A・スタイナー著、犬田充訳『行動科学』(1968・誠信書房) ▽B・ベレルソン、G・A・スタイナー編、南博・社会行動研究会訳『行動科学事典』(1966・誠信書房)』

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世界大百科事典内の行動科学の言及

【経営学】より

…それは,労働者の動機づけのために職場で形成される非公式組織(公式組織・非公式組織)の重要性を指摘したものであった。これに関連するさまざまの研究にもとづいて,50年代に経営学,心理学,社会学などを総合した行動科学が展開した。 この間にもアメリカ経営学の問題意識は,生産現場にとどまることなく,企業活動の全般的な管理に向けられていったが,50年代までその理論的支柱となっていたのは,〈人を通じて事をなさしめる〉という管理活動一般を計画・組織・指揮・統制の各過程に分けて分析する経営過程学派management process schoolの考え方であった。…

【動機づけ】より

…経営学はおよそ20世紀初頭に成立したが,動機づけ論は,アメリカを中心にその成立以来論じられてきた。1950年代に入るとアメリカで行動科学が誕生し,隆盛する。これによって経営学における動機づけ論の展開はかつてなく活発化し,現在に至っている。…

※「行動科学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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