改訂新版 世界大百科事典 「行器」の意味・わかりやすい解説
行器 (ほかい)
戸外への食物運搬用の木製容器。外居とも書く。〈ほかい〉とは盆行事に無縁仏などまつり手のない不特定多数の精霊に,供物を分配するなどの祭祀の行為をもいい,その供物を入れる容器からこの名が付いたといわれている。丸形・角形,刳(くり)物・曲(まげ)物,結桶(ゆいおけ)など形状や作り方はさまざまで,大小各種がある。精巧なものはふた付の円筒形のもので,葛(かつら)という筋を多数つけ内側を朱,外側を黒に漆を塗り,蒔絵(まきえ)を施してある。脚は3本で外に反り,器全体に太い組紐をかける。平安時代から使われたものというが,民間では祭礼や婚礼,葬式,出産祝などに赤飯を入れて贈るのに用いられる。てんびん棒で担いで運搬する。行器は,アイヌの間では,シントコといって,宝壇に飾ったり穀物などを入れるのに使われた。これは日本内地との交易によってもたらされ,近世初頭の製作品も少なくないという。
執筆者:大島 暁雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報