西ナイル熱(読み)にしないるねつ(英語表記)West Nile fever

日本大百科全書(ニッポニカ) 「西ナイル熱」の意味・わかりやすい解説

西ナイル熱
にしないるねつ
West Nile fever

日本脳炎ウイルスなどと同じフラビウイルス科の西ナイルウイルスが原因で起こる感染症。ウエストナイル熱ともいう。流行はアフリカ、中近東、ヨーロッパなどに限られていたが、1999年にアメリカ・ニューヨーク市で流行、2002年には全米に広がり、4000人以上が感染、284人が死亡して国際的な感染症になった。当時、日本国内での発生はなかったが厚生労働省は2002年11月、感染症予防・医療法で届け出るべき4類感染症に指定した。2005年10月には国内初の感染者が確認されている。感染者の2割に39℃を超す突然の高熱があり、頭痛、筋肉痛が出現、半数は胸や背中などに発疹(はっしん)がでる。対症療法しかないが、通常は1週間で回復する。高齢者など一部(感染者の1%)は重症化し西ナイル脳炎を併発、意識障害を起こし、死亡する。ウイルスをもったイエカヤブカに刺されて感染するが、輸血臓器移植を除けば人から人へは感染しない。ウイルスは鳥や家畜の体内でも増殖し、カとの間でやり取りするため、アメリカではニワトリウマ抗体検査を行ってウイルスをもったカがいるかどうかをチェックしている。

田辺 功]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西ナイル熱」の意味・わかりやすい解説

西ナイル熱
にしナイルねつ
West Nile fever

日本脳炎ウイルスに近縁のフラビウイルス科の西ナイルウイルス West Nile virusが起こす熱病。カが媒介し,感染しても8割程度の人は症状がないが,2割程度が発熱,頭痛,筋肉痛,時に発疹,リンパ節のはれを主とするインフルエンザに似た症状を示し1週間程度で快復する。しかし,感染者の1%程度は,高熱,激しい頭痛,意識障害,けいれん,筋力低下,麻痺など脳炎 (西ナイル脳炎 West Nile encephalitis) の症状を示し,重症者では数週間続き,後遺症が残ることもある。高齢者は重症になりやすいといわれている。重症患者の3~15%が死亡するという。治療は対症療法しかない。西ナイルウイルスはトリ中間宿主とし,それをイエカが吸血して感染するサイクルをつくっている。潜伏期間は2~14日。ヒトの他,ウマにも脳炎を起こすことがある。ヒトからヒトへの直接感染はない。予防としてはカに刺されないようにすることしかない。これまでアフリカ,ヨーロッパ,西アジアなどで患者発生・流行の報告があったが,1999年以後,アメリカのニューヨークを中心に流行して,注目を集めた。

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