改訂新版 世界大百科事典 「覚禅抄」の意味・わかりやすい解説
覚禅抄 (かくぜんしょう)
鎌倉初期の仏教書。真言宗の諸経法,諸尊法,灌頂などの作法に関する研究書。著者の金胎房覚禅は,勧修寺の興然,醍醐寺の勝賢などに師事した博学多聞の僧で,絵に巧みであった。鎌倉時代の前期は,密教の行法に関する知識の集成がさかんであったが,覚禅は数十年をかけて諸師の口伝を集め,膨大な典籍を調査して100余巻の書を著した。《覚禅抄》は広く《百巻抄》の名で知られたが,現存するものは120余巻で,巻数や写本による異同などの正確なことはわかっていない。東密の行法についての詳細な記述は,台密の《阿娑縛抄(あさばしよう)》と並ぶ重要なものであり,とくに400葉近い図像は,図像研究上貴重な資料である。
執筆者:大隅 和雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報