東密(読み)トウミツ

デジタル大辞泉 「東密」の意味・読み・例文・類語

とう‐みつ【東密】

空海の伝えた密教真言宗をさす。京都の東寺教王護国寺)に興ったのでこうよび、天台宗台密に対していう。

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精選版 日本国語大辞典 「東密」の意味・読み・例文・類語

とう‐みつ【東密】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。京都の東寺(教王護国寺)を真言道場とする密教の称。空海を開祖とする真言宗をさし、天台の密教である台密に対していう。
    1. [初出の実例]「延暦之末、伝教弘法一時異受、故有台密、有東密」(出典元亨釈書(1322)二七)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「東密」の意味・わかりやすい解説

東密
とうみつ

京都・東寺(とうじ)(教王護国寺)を根本道場とした真言(しんごん)密教(真言宗)。比叡山(ひえいざん)の天台宗の密教を台密(たいみつ)というのに対し、東寺の密教の意味で、主として実修面(事相)から東密という。823年(弘仁14)空海は嵯峨(さが)帝から東寺を給預され、以後、東密は京都、紀州(和歌山県)高野山(こうやさん)に広がった。空海の密教の実修面は実慧(じちえ)・真紹(しんしょう)・宗叡(しゅえい)に、他方は真雅(しんが)・真然(しんぜん)にと伝わり、これらの流れは源仁(げんにん)によって統合された。源仁門下に益信(やくしん)・聖宝(しょうぼう)が出て、益信の法流は宇多(うだ)法皇・寛空(かんくう)・寛朝に伝えられ、寛朝は京都・広沢(ひろさわ)に遍照寺(へんじょうじ)を建立して広沢流の祖となる。これは仁和(にんな)寺系の東密である。聖宝の流れは仁海(にんがい)が京都・小野に曼荼羅寺(まんだらじ)を建立して小野流の祖となる。これは醍醐(だいご)寺系の東密である。これらを野沢(やたく)二流といい、それぞれ六派に分かれたので野沢根本十二流という。その後、小野流に二十派、広沢流に四派が分流したので、鎌倉時代には東密三十六流とよばれた。このほか、高野山には中院流持明院(じみょういん)流があり、総じて七十余流になった。

宮坂宥勝

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百科事典マイペディア 「東密」の意味・わかりやすい解説

東密【とうみつ】

広くは真言宗密教台密(たいみつ)に対。空海東寺を根本道場として以来,この名は東寺の密教の略称として使用された。空海から真雅,真然,源仁と伝え,源仁の門下に益信(やくしん),聖宝(しょうほう)が出て,益信の末流から10世紀初めに広沢流,聖宝の末流から小野流が出た。さらに多くの流派を生じ,東密三十六流といわれる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「東密」の意味・わかりやすい解説

東密
とうみつ

空海の伝えた密教をいう。この名の起りは真言宗の根本道場である東寺 (京都の教王護国寺 ) にある。東密の特徴は,(1) 大日如来を主尊とし,大日如来と釈尊とを別体とする。 (2) 『金剛頂経』よりは『大日経』を重んじる。 (3) 愛染明王法を最も重要な法とする。 (4) 法門の相承は両部に通じたものとする。 (5) 神道両部神道の立場を取る,などである。これに対して最澄の伝えた密教を台密 (たいみつ) と称する。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「東密」の解説

東密
とうみつ

空海によって開かれた真言密教のこと。天台密教の台密に対する語で,鎌倉末期の「元亨(げんこう)釈書」が初見。入唐して恵果から伝法灌頂(かんじょう)をうけた空海が,帰国後の823年(弘仁14)教王護国寺(東寺)を与えられて根本道場としたことから東密とよばれた。平安時代に事相面から広沢流・小野流の2大潮流にわかれ,鎌倉時代は野沢(やたく)三六流に分派。13世紀末には古義派と新義派にわかれた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「東密」の解説

東密
とうみつ

真言宗の密教
密教は元来真言宗のみであったが,天台宗が密教化するに及んで,その台密に対し,東寺を根本道場とすることから東密と称された。

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世界大百科事典(旧版)内の東密の言及

【真言宗】より

…日本の仏教宗派の一つ。真言陀羅尼(だらに)宗ともいい,また天台系の密教を台密というのに対して東密(東寺の密教)とも呼ばれる。宗祖は空海(弘法大師)。…

【密教】より

…帰国後,空海は独自の教判論を打ち立て,ダイナミックな思想大系をもつ真言密教を完成させた。真言系の密教は,両部不二の思想,つまり物質原理と精神原理の一元化をその特色とし,東密と呼ばれる。東密は,以後,平安末期の覚鑁(かくばん)の教学改革をも経ながら,めざましい発展を示して今日に及んでいる。…

※「東密」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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