解離性大動脈瘤(読み)カイリセイダイドウミャクリュウ(英語表記)dissecting aneurysm of the aorta

デジタル大辞泉 「解離性大動脈瘤」の意味・読み・例文・類語

かいりせい‐だいどうみゃくりゅう〔‐ダイドウミヤクリウ〕【解離性大動脈×瘤】

大動脈解離によって血管壁内に生じた偽腔が膨らんでこぶのようになった状態

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「解離性大動脈瘤」の意味・わかりやすい解説

解離性大動脈瘤 (かいりせいだいどうみゃくりゅう)
dissecting aneurysm of the aorta

大動脈の壁は内膜,中膜,外膜の3層からなるが,中膜が内外2層に解離して,そこに血液が流れこんで血腫が形成された状態をいう。大動脈の解離では,内膜が裂け,裂け目(エントリーentryという)が中膜の内層寄りの部分に広がっていくのが普通である。中膜が正常である場合は少なく,大部分は基礎に中膜の変性がみられ,高血圧症,先天性心疾患マルファン症候群,内分泌異常,妊娠外傷,大動脈炎などに合併しておこる例が多い。エントリーは,大動脈の走行の関係で,大動脈壁に最も大きな力の加わる所にできやすく,したがって,その大部分は上行大動脈と,下行大動脈の左鎖骨下動脈分岐部直下にみられる。解離した大動脈壁内腔は偽腔といわれるが,偽腔の広がりによってド・ベーキーDe Bakeyは大動脈瘤を3型に分けた。Ⅰ型は大動脈全体にわたるもので解離性大動脈瘤全体の約75%,Ⅱ型は上行大動脈のみに限局したもので約5%,Ⅲ型は下行大動脈より末梢に広がるもので約20%を占めている。

 一般に男性に多く,40~60歳代に発症ピークがある。突然,主として胸部激痛で始まるが,呼吸困難,心不全,失神発作腹痛吐き気嘔吐,血尿,乏尿など,血流が障害される臓器によっていろいろな症状がみられる。解離を放置した場合,約50%が48時間以内に死亡し,約70%が1週間以内に死亡するといわれており,いずれにしても急性期の死亡率がかなり高い。死因は,心タンポナーデ(心囊内に動脈瘤が破裂して急速に血液がたまった状態),動脈瘤破裂による出血などが多い。

 大動脈造影,超音波診断,コンピューター断層撮影等で解離性動脈瘤が確認できるが,エントリーを見いだすことは必ずしも容易ではない。治療は,まず収縮期血圧を90~120mmHgにまで下げることが第一である。急性期のⅠ,Ⅱ型では,早急に手術を行い,偽腔を閉鎖するが,Ⅲ型では降圧療法で経過をみてもよい。慢性期では,動脈瘤の増大,その他の合併症が認められれば手術が必要である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「解離性大動脈瘤」の意味・わかりやすい解説

解離性大動脈瘤
かいりせいだいどうみゃくりゅう
dissecting aneurysm of aorta

3層になっている大動脈の血管壁のうち,まんなかにある中膜に壊死などが生じて内層と外層に分れ,その間に血液が流入して瘤 (こぶ) 状になる病気。大半の場合,血液は大動脈に戻るが,破裂して大出血を起すこともある。発作は激痛を伴って急激に始り,嘔吐などの症状がある。原因としては血管組織の遺伝的な脆弱性や動脈硬化性病変などが考えられており,血圧や血流の急激な変化が加わって発症するとみられる。急性発症時の死亡率は高く,24時間で 20%との報告がある。治療には降圧剤の投与のほか,血管形成手術や人工血管の置換手術などが行われる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android