大槻文彦の著した国語辞典。1875年(明治8)2月起草,84年脱稿,これを4分冊にして89年5月に第1版を刊行,91年4月に完結したもの。その後,1冊にまとめられ,大正末年までに四百数十版を重ねた。本書以前にも辞書の形式をそなえたものがないわけではなかったが,収載語の豊富と語釈の精確とをもって,日本の辞書史上に不朽の足跡をのこす労作であった。しかし,時代の推移にもとづく新語の増補のないまま版を重ねてきたこと,もともと古語の多いこと,また漢語の多くはむしろ漢和辞書に譲っていることなどの点から,しだいに〈古語辞書〉としての価値しかもたなくなってしまった。昭和にはいって《大言海》が出版され,もとの《言海》のほうは,もはやその原形をとどめぬまでに完全にそのなかに吸収されてしまった。
→大言海
執筆者:亀井 孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
国語辞書。大槻文彦(おおつきふみひこ)編、4冊(初版)。1889~91年(明治22~24)初刊。わが国で最初の近代的な組織の普通語辞書。収録語数3万9103語。1875年(明治8)文部省の命によりつくり始める。ウェブスターのオクタボ版にその構成を倣い、多年の労苦のうえ完成した。特色としては、(1)基本語も含めた普通語の辞書であること、(2)五十音順で配列したこと、(3)近代的な品詞の略号と、古語・訛語俚語(かごりご)の印をつけ、活用を示したこと、(4)語釈に段階づけをしたこと、(5)用例を載せたこと、などがある。これらは以後の普通語辞書の範となった。のちに『大言海』(冨山房刊)として増補された。巻首の「語法指南」は『広日本文典』、『広日本文典別記』(ともに1897刊)の基礎となった。
[古田 啓]
『山田忠雄著『近代国語辞書の歩み』(1981・三省堂)』▽『高田宏著『言葉の海へ』(新潮文庫)』
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…その業績は,辞典の編修,文典の著述,および国字問題への尽力において著しい。《言海》(1889‐91)は,初め文部省の命で10年を費やして脱稿したものであるが,画期的な国語辞書として,後年数百版を重ねた。晩年十数年はその増訂に専心したが,その《大言海》は没後(1937)に至って完成した。…
※「言海」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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