老人保健法(読み)ろうじんほけんほう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

老人保健法
ろうじんほけんほう

昭和57年法律80号。国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保のため,疾病の予防,治療,機能訓練などの保健事業を総合的に実施し,それによって国民保健の向上および老人福祉の増進をはかることを目的とする法律。医療保険財政の悪化に対処するため,老人医療費支給制度に代えて制定された。老人保健の医療については医療保険各制度加入者のうち 70歳以上の者および 65歳以上 70歳未満の一定の障害者を対象とする。医療内容は健康保険法の場合と同様である。経営主体は市区町村である。医療以外の保健事業としては,健康手帳交付,健康教育,健康相談,健康診査,特定療養費および老人保健施設療養費の支給,機能訓練,訪問指導などがある。これらの費用のうち医療などの給付費については,国が 10分の2,都道府県が 20分の1,市区町村が 20分の1ずつ負担し,残りの 10分の7は医療等給付費交付金から支払われる。この交付金は,支払基金が保険者から老人保健拠出金を徴収し,市区町村に交付するものである。これに対し,医療以外の保健事業に要する費用については,国・都道府県・市区町村でそれぞれ 3分の1ずつ負担する。2006年の改正によって,2008年「高齢者の医療の確保に関する法律」に改題された。(→老人保健制度

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デジタル大辞泉の解説

ろうじんほけん‐ほう〔ラウジンホケンハフ〕【老人保健法】

高齢者の健康の保持や医療の確保を図るために、疾病の予防、治療、機能訓練などの保健事業を総合的に実施し、国民保健の向上、老人福祉の増進を図ることを目的として制定された法律。昭和58年(1983)施行。この趣旨を踏襲しつつ発展させることを目的として、平成18年(2006)の医療制度改革のなかで全面的な改正が行われ、平成20年(2008)改正法の施行により法律名も老人保健法から「高齢者の医療の確保に関する法律」に改称。→後期高齢者医療制度

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百科事典マイペディアの解説

老人保健法【ろうじんほけんほう】

老人医療費公費負担制度を引き継ぎ,老後の健康保持と適切な医療を確保するとともに,老人医療費を公平に負担する名目で,1982年に公布され,1983年2月から施行されている。この法律では〈医療等〉と〈医療等以外の保健事業〉を2本の柱とし,前者では老人医療費支給事業を,後者では40歳以上の者を対象とする各種の保健事業が行われている。1986年に老人医療費の財政負担の改訂のほかに,老人保健施設を創設,1991年には老人訪問看護制度を新たに創設し,その拠点施設として老人訪問看護ステーション設置をしたりしている。公的介護保険制度の導入,医療制度の全面見直しのなかで,1997年にも改正されたが,患者の自己負担が増える内容となった。2008年4月からの後期高齢者医療制度の発足とともに「高齢者の医療の確保に関する法律」と法律名が変更された。2009年9月,後期高齢者医療制度廃止法案を提出した民主党・社会党・国民新党が政権与党となって鳩山由紀夫内閣が発足するが,後期高齢者医療制度に代わる案がないため,この制度が当面維持されることとなった。
→関連項目訪問看護ステーション

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大辞林 第三版の解説

ろうじんほけんほう【老人保健法】

老人を対象とする医療および成人・老人に対する保健事業について定めた法律。1983年(昭和58)施行。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

老人保健法
ろうじんほけんほう

国民の老後における健康の保持と適切な医療の確保を図るため、疾病の予防、治療、機能訓練等の保健事業を総合的に実施し、国民保健の向上および老人福祉の増進を図ることを目的とした法律。昭和57年法律第80号。1982年(昭和57)に制定され翌年2月に実施されたが、2006年(平成18)の改正により「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」に名称が変更されるとともに、老人保健法の事業が発展的に継承された。
 老人保健法制定前は、1978年(昭和48)から、一定所得以下の老人を対象として、医療保険の自己負担分を公費で支給する老人医療の無料化が行われていた。しかし、この老人医療費支給制度については、過剰な受診を招きがちであること、老人加入率が高い国民健康保険(国保)の財政を圧迫すること、老人の健康という観点からは壮年期からの生活習慣病の予防や早期発見が重要であることなどが指摘されるようになり、老人保健法が制定された。同法では、市町村を実施主体として、負担の公平と健康への自覚や適正な受診を促すという観点から一部負担を求めたほか、その費用を公費と各医療保険者が共同で負担するとともに、疾病予防や健康づくりを含む総合的な老人保健医療対策を推進することとした。
 このうち老人医療については、その後、対象者が当初の70歳以上から75歳以上に引き上げられ、また公費の負担割合も当初の3割から5割に引き上げられた。しかし、この制度については、現役世代と高齢世代の費用負担関係や運営責任が不明確だという問題などが指摘されるようになり、新たな高齢者医療制度が創設され、2008年4月から施行された。[山崎泰彦]
『栄畑潤著『医療保険の構造改革――平成18年改革の軌跡とポイント』(2007・法研) ▽吉原健二・和田勝著『日本医療保険制度史』増補改訂版(2008・東洋経済新報社) ▽島崎謙治著『日本の医療――制度と政策』(2011・東京大学出版会)』

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世界大百科事典内の老人保健法の言及

【医療費】より

…第2次大戦後は制度の改革が進み,生活困窮者に対する医療扶助とその他の人々に対する医療保険の二つを柱とする医療保障制度が確立し,さらに61年には全国民をなんらかの医療保険に加入させる国民皆保険の体制が実現した。人口高齢化の進行とともに老人保健医療対策が課題となり,医療保険制度間の老人医療費負担のアンバランスの是正や保険と保健を総合した制度の確立をめざして,老人保健法(1982公布)が成立し実施された。これによって病気と貧困の悪循環はほぼ解消され,代わって人口高齢化社会の医療費急増時代に突入している。…

【社会保障】より

…これに急速な人口高齢化が加わり,医療保険の累積赤字は拡大し,年金保険の財政悪化と分立している各制度間のアンバランスが顕著になってきた。82年には老人保健法が成立し,各保険制度からの財源をプールして高齢者の医療保険給付費を調達することになり,年金保険においても各保険制度間の格差是正と年金保険財政の安定を図るなどの目的で85年に基礎年金制度が導入された(〈年金〉の項を参照)。低成長経済と高齢化社会において最低生活保障の原則が維持され,生活安定の実を上げるために,分立している制度間の総合調整と相互連係を行い,適正な給付と適正な負担,国庫負担の重点的配分などの諸政策が必要になっている(〈介護保険〉の項参照)。…

【職域保険・地域保険】より

…農山漁村住民,自営業者,零細企業従事者,老齢者等が対象となる国民健康保険は,加入者の支払能力が一般に低いうえにその判定が必ずしも容易でなく,雇主負担もないために保険料収入を大幅に上回る国庫負担が支払われているが,なおかつ給付水準は被用者保険より劣っている。こうした財政力格差,年齢構成差を修正するために,老人医療費に関して一定の財政調整効果を持つ老人保健法(1982公布)が,83年より実施されている。【一圓 光彌】。…

【保険医療】より

…73年老人福祉法改正により老人医療無料化,健康保険法改正による被扶養者の7割給付,一定の負担額を超える額を支給する高額療養費支給制度が設けられた。83年2月老人保健法(老人医療)が実施され,従来の老人医療無料制度を廃止し,70歳以上の老人と65歳以上70歳未満のいわゆるねたきり老人は,同法の規定により市町村の医療給付の対象とされ,また,新たに定額の一部負担金(外来1月400円,入院1日300円・2ヵ月間限り)を支払うことになり,制度的に若い人と区分された。84年特定療養費制度が導入され,大学病院等の先端医療,特別病室の差額徴収が制度化された。…

【老人医療】より

…老人医療無料化は医療の現場と患者の双方に混乱を生みだしただけでなく,とりわけ老人を多くかかえる医療保険制度の財政危機の原因となった。
[老人保健法以後の問題]
 こうしたなかで,必要なのは高度で濃密な医療より老人に適した医療や看護であり,また老人の自立を高めるための予防やリハビリテーションなどの保健活動であるという認識が高まった。その一方で経済が低成長に変わったことに対応して老人医療においても自助意識に訴える必要が叫ばれ,〈自助と連帯〉〈保健サービス〉の二つを柱とする老人保健法(1982公布)が生まれた。…

【老人保健制度】より

…高齢化が急速にすすむ状況のもとで制定された老人保健法(1982)を軸とする諸施策をさす。その前史としては,1963年制定の老人福祉法において65歳以上の者に対する健康診査が福祉の措置として規定されたほか,保健所活動として老人の保健指導等が実施されることとなった。…

※「老人保健法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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