論告求刑(読み)ろんこくきゅうけい

改訂新版 世界大百科事典 「論告求刑」の意味・わかりやすい解説

論告・求刑 (ろんこくきゅうけい)

刑事訴訟における公判期日の手続は,冒頭手続証拠調べを経て弁論へと進む。すなわち,証拠調べの結果に基づいて,まず検察側が,ついで弁護側が,事実上・法律上の意見を述べる段階となる(刑事訴訟法293条)。ここで検察官の行う意見陳述を,とくに論告と呼ぶ。その内容は,通常,被告人有罪であることを説くものであり,それに伴って量刑についての意見(求刑)も述べられる。求刑を行うことは,とくに法が要求しているわけではないが,実務慣行となっている。裁判所はむろん求刑に拘束されはしないが,求刑は,独立して職務を行うべき各裁判所(官)に対し(憲法76条3項),全国的に統一された組織をもつ検察庁が,全国的に均衡のとれた量刑の基準を示すという重要な働きをするものといえよう。この論告・求刑に続いて弁護側の意見陳述がなされる。それに対して検察側が重ねて意見を述べることもあるが,その場合には弁護側になお最終の陳述権が保障される(刑事訴訟規則211条)。なお,証拠調べの成行きによっては,検察官としても被告人を無罪とするのが相当であると判断することもないとはいえない。その場合,検察官には公益代表者としての活動が期待され(検察庁法4条),被告人無罪の意見が述べられることになろう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「論告求刑」の意味・わかりやすい解説

論告求刑
ろんこくきゅうけい

証拠調べが終わったあと、検察官が事実および法律の適用について意見を陳述することを論告といい(刑事訴訟法293条1項)、この際、慣行として検察官が述べる具体的刑罰の種類および分量についての意見を求刑という。論告は、証拠調べの結果を基礎としてこれを行うことを要する。かならずしも被告人の有罪を主張するものに限られない。また判例は、求刑の合憲性を肯定して、裁判官は公判審理において事実および適用法条についてだけでなく、具体的刑罰の種類および分量についても当事者双方の意見を聞いて、その良心に従い独立して公平に職権を行うもので、当事者の一方だけの意見に拘束されるものではないからだ、としている。

[内田一郎]

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世界大百科事典(旧版)内の論告求刑の言及

【公判】より

…(3)証拠調べが終わると,弁論の段階を迎える(他の用語法と区別して,最終弁論とも呼ばれる)。まず,検察官が事実および法律の適用について意見を述べ,求刑も行う(論告・求刑)。ついで,被告人および弁護人の意見陳述がなされる。…

※「論告求刑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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