四国の讃岐地方に多産する灰黒色で緻密(ちみつ)な安山岩。この安山岩は、マグネシウムに富む斜方輝石の小さな斑晶(はんしょう)以外の斑晶をほとんど含まない。石基は細粒~ガラス質で、磁鉄鉱の小さな結晶を多数含む。化学組成は島弧(弧状列島)のカルク・アルカリ岩系安山岩一般に比べてマグネシウムに富む。安山岩としてはマグネシウム対鉄の比が異常に大きいのが特徴である。この安山岩は、上部マントルをつくっている水分を含む橄欖(かんらん)岩が一部分だけ融解してできたマグマが、マグマだまりをつくらず、マグマだまりでの分別結晶作用の過程を経ずにそのまま上昇・噴出したものと考えられている。小笠原(おがさわら)諸島にも同じ特徴をもつ岩石(無人岩あるいはボニナイトboniniteという)が知られていて、まとめて高マグネシア安山岩とよばれている。讃岐岩は瀬戸内海、四国北部を中心に分布する新生代中新世後期の火山岩の一部をなしている。1891年にドイツのワインシェンクE. Weinschenk(1865―1921)が命名した。サヌカイト、カンカン石(木槌(きづち)でたたくと澄んだカンカンという音がする)ともいう。1916年(大正5)に地質学者の小藤文次郎(ことうぶんじろう)は、瀬戸内地域に産する讃岐岩と近縁の玄武岩~安山岩をサヌキトイドsanukitoidとよんだ。近畿・瀬戸内周辺地域では、旧石器時代から弥生(やよい)時代中期まで、サヌキトイドを含めた讃岐岩が刃物用石材として利用されていた。
[千葉とき子]
『竹広文明著『サヌカイトと先史社会』(2003・溪水社)』
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…瀬戸内海から四国北部に分布する新第三紀火山岩のなかに,マグネシウムMgに富む斜方輝石(古銅輝石)の斑晶のほかには斑晶が少なく,石基は比較的ガラス質で緻密な安山岩が産出し,これを特にサヌカイト(讃岐岩,讃岐石ともいう)と呼ぶことがある。この岩石の化学組成はマグネシウム対鉄の比(Mg/Fe比)が異常に大きい特徴があり,その一部は上部マントルの水を含んだカンラン岩が部分溶融してできたマグマが,直接上昇固結したためにできたとされている。…
※「讃岐岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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