能の曲名。四・五番目物。作者不明。前ジテ(宝生流ではツレ)は松若の母。後ジテは伎楽鬼神(ぎがくきじん)。都,東山の山伏(ワキ)が弟子の松若という少年(子方)の家を尋ねると,松若は,母(前ジテまたはツレ)の病気平癒を祈るため,師の山伏一行の峰入りに加わりたいと願い,母の見送りを受けて家を出る。葛城(かつらぎ)山の山室で松若は病気になる。修行の途中で重病になった者は,谷行といって,谷へ投げ落として命を絶つのが山伏の法である。小先達(こせんだち)(ワキヅレ)はじめ,山伏一同からそのことを求められ,師匠が松若に大法の由を説き聞かせると,松若は納得して別れを惜しむ。師匠も嘆きにうち沈むが,一同は涙をふり払って谷行を行う(〈クセ〉)。夜が明けて出発の時刻となるが,師匠の悲しみは尽きないので,一同はその心情に打たれ,蘇生の祈りをすると,役行者(えんのぎようじや)(ツレ)が現れ,伎楽鬼神(後ジテ)を呼び出して松若を助け出し,師匠に与える(〈中ノリ地〉)。
観世流では役行者を出さずに後ジテの出にすぐつなぐ。ワキを主人公とする能なので上演の機会が少ないが,ドイツの劇作家ブレヒト脚本の歌劇《ヤーザーガー(“はい”という人)》の原典として知られる。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
能の曲目。四、五番目物。五流現行曲。作者は金春禅竹(こんぱるぜんちく)とも。母(前シテ)を説得した松若(子方)は、師匠の帥(そつ)の阿闍梨(あじゃり)(ワキ)に従って峰入り修行に参加する。病気になった少年は山伏の定め「谷行」に従って谷底へ投げ込まれ、殺されてしまう。わが身も同じにと嘆く阿闍梨に山伏たち(ワキツレ)は同情し、松若の蘇生(そせい)を役行者(えんのぎょうじゃ)に祈る。すると伎楽(ぎがく)鬼神(後シテ)が現れて、松若を掘り返して生き返らせる。師弟愛を軸にした奇跡劇であり、ワキの重い習いの能である。役行者を舞台に出す演出もある。ドイツの劇作家ブレヒトにこの能にヒントを得た作品がある。
[増田正造]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新