阿闍梨(読み)アジャリ

デジタル大辞泉 「阿闍梨」の意味・読み・例文・類語

あじゃり【××梨】

《〈梵〉ācāryaの音写阿闍梨耶あじゃりや」の略。教授・軌範・正行などと訳す》
弟子たちの模範となる高僧の敬称。あざり。
密教で、修行を完了し、伝法灌頂でんぽうかんじょうを受けた僧。また、伝法灌頂の職位を受けた、天台宗真言宗の僧。あざり。
勅旨によって修せられる法会を執行する僧。
[類語]和尚上人大師三蔵猊下

あざり【××梨】

あじゃり(阿闍梨)

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共同通信ニュース用語解説 「阿闍梨」の解説

阿闍梨

修行と学問に優れ、高い徳を持った偉大な師匠。日本では位や職名として用いるようになった。

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精選版 日本国語大辞典 「阿闍梨」の意味・読み・例文・類語

あじゃり【阿闍梨】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] ācārya の音訳。弟子を教授し、その軌範となる師の意 ) 仏語。小乗の律ではこれに出家、受戒、教授、受経、依止(えじ)などの別を数え、また大乗では羯摩(かつま・こんま)、教授の二つをたてる。また密教では、学法灌頂と伝法灌頂の二つをたてる。あざり。
    1. (イ) 密教で秘法に通じ、伝法灌頂(でんぼうかんじょう)(=秘法を伝授する儀式)を受けた者をいう。後に伝法灌頂を受けた僧に宣旨によって与えられる称号
      1. [初出の実例]「詣少僧都真紹阿闍梨位灌頂」(出典:日本三代実録‐元慶八年(884)三月)
    2. (ロ) 比叡山など七高山、およびその他に祈祷の勅命を受けた僧。
    3. (ハ) 一身を限って補せられた貴種の名徳の僧。一身阿闍梨
  2. 平安時代、勅旨を奉じて修せられる法会を、已講(いこう)、内供(ないぐ)とともにとり行なう僧。転じて、修法(ずほう)(=加持祈祷)の導師を勤める僧。
    1. [初出の実例]「阿闍梨にまうでくる人も候はぬを」(出典:大鏡(12C前)四)
  3. 一般に弟子を教え、その師範となる高徳の僧の尊称。
    1. [初出の実例]「是よりひゑいざんさいとう北だに、そののあしゃりと申せしは」(出典:説経節・あいごの若(山本九兵衛板)(1661)四)

阿闍梨の補助注記

一般に梵語アーチャーリャの音写とされるが、中央アジアトカラ語での語形アーシャリ・アシャリの音写とする見方もある。


あざり【阿闍梨】

  1. 〘 名詞 〙 仏語。
  2. あじゃり(阿闍梨)
    1. [初出の実例]「悟いと深く、験(しるし)あり。院奏せさせ給て、真言院のあざりになされぬ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)吹上下)
  3. あじゃり(阿闍梨)
    1. [初出の実例]「七月の修法のあざり、日中の時(じ)などおこなふ」(出典:枕草子(10C終)一二三)
  4. あじゃり(阿闍梨)
    1. [初出の実例]「仁和寺の何がしのあざりの車にて、母上の、太秦(うずまさ)に参りて帰らせ給ふなり」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「阿闍梨」の意味・わかりやすい解説

阿闍梨 (あじゃり)

サンスクリットācāryaの音写。阿舎梨,阿闍梨耶とも書く。一般には師,師匠の意。バラモンでは弟子にベーダ等の儀則を教示する人を指した。小乗仏教では弟子の行為を正し,師範として教授する徳の高い僧を指す。規範師と訳す。四分律では出家,受戒,教授,受経,依止の5種の阿闍梨があるとする。大乗円頓戒では文殊を羯磨阿闍梨,弥勒を教授阿闍梨と称する。密教では大日如来や諸仏菩薩を指す場合もあるが,狭義には灌頂(かんぢよう)の導師および伝法灌頂を受けたものを阿闍梨という。伝法灌頂の導師を大阿闍梨または大阿といい,作法を指導する教授阿闍梨がある。最高指導者としての阿闍梨には菩提心,妙慧と慈悲,兼綜衆芸,般若波羅蜜行,通達三乗,真言実義の理解,衆生心を知り,諸仏菩薩を信じ,受伝法灌頂と曼荼羅の画を解し,性調柔で我執を離れ,決定を得,瑜伽を究習し,勇健の菩提心に住するという13種の徳が要求される。日本での阿闍梨の初見は《日本書紀》に見られるが,日本では真言の秘法を伝授する職名として師資相承を原則とする真言,天台両密教系の御願寺,定額寺の僧が勅命で認可され,のち私寺にも設置された。職掌上,伝法阿闍梨,受戒阿闍梨,試業阿闍梨,検封阿闍梨,格式化したものに大阿闍梨,小阿闍梨,一身阿闍梨,永宣旨阿闍梨等がある。真言宗では823年(弘仁14)東寺に伝法阿闍梨が,天台宗では斉衡年中(854-857)に惣持院に8人の阿闍梨が許された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿闍梨」の意味・わかりやすい解説

阿闍梨
あじゃり

サンスクリット語アーチャーリヤācāryaの音訳。軌範師(きはんし)と漢訳する。先生の意であるが、仏教では弟子を教え範となる師、高僧をいう。バラモン教ではベーダなどの儀式の教授者を意味した。『四分律(しぶんりつ)』によると、インド仏教では師匠に2種の別があり、授戒師を和尚(おしょう)といい、教授師を阿闍梨とよんだ。安居(あんご)を5回以上行った戒律に詳しい僧がなり、出家、受戒、教授、受経、依止(えし)の種別がある。後世の密教では伝法灌頂(でんぽうかんじょう)を受けた僧をさす。日本では真言宗、天台宗の僧の職名。

[小川 宏]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿闍梨」の意味・わかりやすい解説

阿闍梨
あじゃり

サンスクリット語 ācāryaの音写。師匠の意。文字どおりの意味は,伝統的な正しい態度,習慣や,確定された規定などを知り,保ち,実行する人の意。師を意味するほかの言葉グル guruに比して非常に古く,『アタルバ・ベーダ』にすでにみえる。上級カーストの少年になされる入門式,およびその教育の期間に指導教育するバラモンが,こう呼ばれた。仏教においても同様で,精神的な指導をする僧侶をさし,特殊な場合は戒を授ける師をさす。日本では僧職の一つに用いられる。

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百科事典マイペディア 「阿闍梨」の意味・わかりやすい解説

阿闍梨【あじゃり】

サンスクリット,アーチャーリヤの音写で,軌範師と訳す。仏教で弟子を教授し,その軌範となる師。律宗密教などでは特殊な授戒の場合に限って師をこの名で呼ぶ。日本では僧の階級の一つ。

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世界大百科事典(旧版)内の阿闍梨の言及

【学侶】より

…いずれも最高位の検校(けんぎよう)にまで昇進できる。学侶の位階は大法師,入寺,三昧,山籠,阿闍梨と進むが,﨟次(ろうじ)に従うのを原則とし,途中学道3年目から加入するのを横入(おうにゆう)と称した。﨟次に応じて年俸や供料がついた。…

【僧】より

…比丘とは乞食者(パーリ語のビックbhikkhu)の意味で,仏教の修行者が元来,出家・遊行を旨とし,托鉢(たくはつ)すなわち鉢を持って食を乞うて生活する沙門(しやもん)であったことに由来する。修行者はまた,教団内の役割に応じて,上座(大衆を統率する),維那(寺務をつかさどる),阿闍梨(あじやり)(大衆の教育に当たる),和尚(弟子を養育する)等とよばれ,あるいは法師(在家信者へ説法。布教者),瑜伽師(ゆがし)(禅師。…

【伝法】より

…密教では加行と授戒を経て,伝法灌頂(でんぼうかんぢよう)を受けることができる。これによって阿闍梨(あじやり)となり,次の受者に伝法することができるようになる。これを伝法職位(しきい)という。…

※「阿闍梨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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