0(零)より小さい数を負の数という。負の数はたとえば0より1小さい数は-1のように、負を表す記号-をつけて書かれる。記号-をマイナスの符号という。0より大きい数は、負の数に対して正の数といわれ、正の符号+(プラスという)をもつものと考える。符号+はしばしば省略される。0は符号をもたない。
正の数、0、負の数に対して、絶対値が定められる。正の数、0の絶対値はそのまま、負の数の絶対値は、その符号だけを正にした正の数である。正の数では絶対値の大きい数ほど大きいが、負の数では絶対値の大きい数ほど小さい。また、正の数は、すべて負の数より大きい。そして正の数、0、負の数は、大小の順に数直線上に並んでいる。このとき、普通、正の数は0の右側、負の数は0の左側に並ぶ。
負の数を含む四則計算は次のようにしてなされる。
同符号の二数の和は、絶対値の和に共通の符号をつける。異符号の二数の和は、絶対値の差に絶対値の大きいほうの符号をつける。
例(-3)+(-2)=-(3+2)=-5,
(-3)+(+2)=-(3-2)=-1,
(-3)+(+5)=+(5-3)=+2
ある数を引くには、その数の符号を変えた数、つまり、絶対値が等しく符号が反対の数を足せばよい。
例(-3)-(+2)=(-3)+(-2)=-5,
(-3)-(-2)=(-3)+(+2)=-1
ある数に対して、符号を変えた数を、もとの数の反数ということがある。同符号の二数の積・商は、絶対値の積・商に正の符号をつける。異符号の積・商は、絶対値の積・商に負の符号をつける。
例(-3)×(-2)=+(3×2)=+6,
(-12)÷(-4)=+(12÷4)=+3,
(-3)×(+2)=-(3×2)=-6,
(-12)÷(+4)=-(12÷4)=-3,
負の数には、負の整数(例 -1,-3)、負の分数(例 -1/2,-2.2/5)や負の無理数(例 -,-)がすべて含まれる。
自然数の範囲だけで考えると、その加法と乗法の結果は求められるが、減法の結果は、この範囲で求められるとはいえない。いつでも減法が可能になるように自然数の範囲を拡張したものが、負の整数も含めた整数全体の範囲といえる。
負の数は、東洋(中国)では非常に古くからみいだされていた。中国最古の数学書『九章算術』には、正の数・負の数の計算法が述べられている。西洋に負の数が知られるようになったのは13世紀ごろといわれる。
[三輪辰郎]
負数ともいう。0より小さい実数のこと。数の前に-の符号をつけ,-1,-2,-3,……のように表す。歴史的にみて,負の数の概念の導入は地域によって大きい差異があり,古代に負の数を理解していたと思えるのは中国だけのようである。中国では3世紀の成立といわれる数学書《九章算術》における連立一次方程式の解法で負の数の利用がみられる。他方,7世紀ごろインドのブラフマグプタが零および負の数の概念を導入した。それが8世紀ごろアラビアに伝わり,次いでヨーロッパに伝わったのは12世紀ごろとみられている。代数方程式の解に負の数を許す(それまでは解としては採用しなかった)ようになったのは16世紀といわれる。
→正の数
執筆者:永田 雅宜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…0でない実数aの平方a2は正の数であり,逆に正の数は0でない実数の平方で表される。0より小さい実数,すなわち,(正の数)×(-1)の形の数は負の数であり,さらに(正の数)×(正の数),(負の数)×(負の数)は正の数,(正の数)×(負の数)は負の数になる。【永田 雅宜】。…
※「負の数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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