哺乳類の1目。歯がないか,あってもエナメル質の層を欠く貧弱な頰歯(きようし)だけのため,貧歯目の名がある。切歯と犬歯はない。胸椎と腰椎にはふつうの関節突起のほかに特別の関節突起があるほか,坐骨が尾椎と関節するなど脊柱が異常にがんじょうで,後肢で体を支え,大きなかぎづめを備えた強力な前肢で穴を掘り,アリ塚を壊し,あるいは敵と闘うのに適する。大脳が小さくて嗅葉(きゆうよう)が大きく,知能が低い。頸椎(けいつい)は哺乳類としては異常で,6個から9個まで変化する。北アメリカの南部から,中央・南アメリカに分布し,現生のものには,骨質の甲をもち雑食性のアルマジロ類,木の枝から長大なつめでぶら下がり,葉を食べるナマケモノ類,歯がなくもっぱらアリとシロアリを食べ,尾に甲の痕跡をもつアリクイ類の4科がある。
きわめて原始的な真獣類で,暁新世から漸新世まで北アメリカにいたパレアノドン亜目(最古の貧歯類で甲がなく脊椎の関節が正常)から分かれて,暁新世末に南アメリカに入った異節亜目のグリプトドン科から,残りの貧歯類が生じた。それらは南アメリカで栄え,北アメリカへ進出したのは,鮮新世または更新世である。グリプトドン科はヘルメット状の動かせない甲をもっていたが,これから分かれたアルマジロ科は,甲が可動性で,体を球状に丸めることができる。次に分かれたのは甲が退化したアリクイ科と地上生のナマケモノの類(メガロニクス科,ミロドン科およびメガテリウム科)で,後者から樹上生のナマケモノ科が分かれでた。北アメリカのメガロニクスにはウシ大,南アメリカのミロドンにはサイ大,南アメリカと北アメリカの両方にいたメガテリウム(オオナマケモノ)には,体長が6mもあり,ゾウよりも大きなものさえあった。ミロドンは南アメリカに更新世まで生き残っていて,それを飼っていたらしい囲いや,毛の生えた生々しい皮の破片,糞などが見つかっている。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱貧歯目に属する動物の総称。この目Edentataの仲間は、アメリカで進化した原始的な真獣類で、歯がないか、あっても単純な円錐(えんすい)形でエナメル質を欠き、乳歯は前顎(ぜんがく)骨には生じない。胸椎(きょうつい)と腰椎の関節突起がほかの哺乳類より1対多く、肩甲骨の肩峰と烏口(うこう)突起が異常に長く、しばしば互いに癒着し、坐骨(ざこつ)は最前位の尾椎と癒着する。頸椎(けいつい)は6~9個。頭骨の脳筺(のうきょう)(脳を入れる部分)は低く円筒形、前顎骨は縮小し、しばしば前鼻骨がある。頬弓(きょうきゅう)は多くは不完全。盲腸はないか、あっても小さく、子宮は単一。精巣は鼠径(そけい)部か腹腔(ふくこう)内にとどまる。北アメリカの第三紀暁新世から漸新世にかけて栄えたパレアノドン亜目Palaeanodontaと、それから分かれて進化した異節亜目Xenarthraがあり、後者は、アリクイ科、ナマケモノ科などからなる甲のない有毛下目Pilosaと、アルマジロ科などの甲が発達したものを含む被甲下目Cingulataに分けられる。有毛下目の地上性のナマケモノ類には、ウシ大のメガロニクス(メガロニクス科)、サイ大のミロドン(ミロドン科)、体重約5トンでゾウと同大のメガテリウム(オオナマケモノ科)などが、被甲下目には体重約2トンのグリプトドン(グリプトドン科)のように巨大なものがあった。
[今泉吉典]
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