陸上物品運送契約において、運送人が運送品を受け取ったことを認証し、かつ、目的地において証券の正当な所持人に運送品を引き渡すことを約束した有価証券。運送中の貨物の売却や質入れのために利用される。荷送人の請求により運送人が発行するもので、その記載事項は法定されている(商法571条)が、その欠缺(けんけつ)があっても、それが貨物引換証としての本質的な記載事項でない限り、かならずしも貨物引換証は無効とされない。また、法律上当然の指図(さしず)証券であって、記名式のものでも裏書による譲渡ができる(同法574条)。運送に関する事項は、運送人と貨物引換証の所持人との間においては、証券の記載によって決定され(同法572条)、いわゆる文言(もんごん)証券であるから、貨物引換証の善意所持人は、証券の文言に従って運送人に対し権利を主張することができる。ただし、貨物引換証は要因証券で、有効な運送契約の存在を前提とするから、この要因を欠く貨物引換証(空券(くうけん))は無効である。また、運送品の引渡しは貨物引換証と引換えでなければ請求できない(同法584条)、いわゆる受戻(うけもどし)証券であるが、保証渡しの商慣習が一般に認められている。運送品の処分に関し、証券の引渡しが運送品の引渡しと同一の効力をもち(同法575条)、したがって貨物引換証が発行された場合には、運送品の処分はつねにこれによらなければならない(同法573条)。海上運送契約における船荷証券と対比される。
[戸田修三]
陸上運送において,運送人が運送品を受け取ったことを認証し,かつ,目的地において証券の正当な所持人にその運送品を引き渡す債務を表章する有価証券。海上運送で成立発展した船荷証券の制度を陸上運送に応用したもので,運送人の占有下にある運送品の譲渡等をこの証券の流通によってなすことができる。すなわち,荷送人は,貨物引換証によって運送中の貨物を譲渡することができるし,またこれを担保として金融の便を得ることができる(荷為替)。荷受人も貨物が到達する前に転売できるという経済効用がある。ただ,陸上運送では,運送の期間が短いため,貨物引換証は,荷為替の場合を除いて船荷証券ほど利用されていないのが現状である。貨物引換証は,荷送人の請求によって運送人が作成し交付する(商法571条1項)。商法は,貨物引換証に一定の記載事項を法定している(要式証券。同条2項)。また,運送人と貨物引換証所持人との間において運送に関する事項については,貨物引換証に定めるところによるものとし(文言証券,債権的効力。572条),貨物引換証の引渡しが証券記載の運送品自体の引渡しと同一の効力を有するものとしている(物権的効力。575条)。
執筆者:石田 満
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[運送人の義務]
物品運送契約において,運送人は,荷送人から運送品を受け取って,それを目的地まで運送して荷受人に引き渡さなければならない。また,運送人は荷送人の請求があれば貨物引換証を作成して交付しなければならない(商法571条1項)。運送人は,物品の受取後その引渡時まで,これを保管する義務を負い,また荷送人または貨物引換証の所持人が運送の中止,運送品の返還その他の処分を命じたときは,その指図に従わなければならない(582条1項)。…
※「貨物引換証」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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