運送人が物品または人の運送を引き受け,運送の依頼人がこれに対して運送賃を支払うことを目的とする契約。これを締結して運送を引き受ける行為は,営業としてなされることにより商行為となる(運送営業)。運送営業は,商品取引の空間的障害を超克する役割を果たしている。運送営業は,陸上・海上・航空運送営業に区別される。商法典は,陸上(湖川港湾を含む)運送を第3編〈商行為〉第8章〈運送営業〉で規整し,海上運送を第4編〈海商〉で特別に規整している。海上物品運送については,内航船の場合と外航船(船積港または陸揚港が本邦外にあるもの)の場合との2本立てになっており,前者は商法典第4編〈海商〉で,後者は国際海上物品運送法(1957公布)で規整している。航空運送については,行政的監督法規として航空法(1952公布)があるが,特別の私法法規は制定されていない。国際航空に関しては,1929年の〈国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約〉(ワルソー条約。日本は1953年加盟)および同条約を一部改正した55年のハーグ議定書(日本は1967年加盟)が国内法として効力を有している。運送営業は,歴史的には,まず海上運送において発達し,その後陸上運送が続き,航空運送は日が浅いが,今日では重要な地位を占める。
運送契約は,運送という仕事の完成を目的とするものであるから,それは請負契約(民法632条)に属する。しかし商法の規定は,運送の法律関係をかなり自足的に規定しているので,民法の請負に関する規定が適用される余地はほとんどない。運送契約は,諾成・不要式の契約であって,物品運送における運送状・航空運送状または貨物引換証・航空貨物引換証・船荷証券の作成交付や旅客運送における乗車券・航空券の発行は,契約成立の要件ではないが,実際には方式化の傾向にある。また運送契約は,公衆に対して多数締結される大量取引であるから,普通契約条款や営業規則による取引の方式がとられている(運送約款)。鉄道・軌道・自動車運送事業・旅客定期航路事業では,原則として運送の引受けを拒絶することができず,締約強制となっており,また運送賃等の運送条件については公示義務が課せられ,公的監督が加えられている。
運送契約において運送を引き受ける者は,運送人である。海上運送では船舶所有者,船舶賃貸人等であるが,包括的名称はない。物品運送契約における運送の委託者は,陸上運送では荷送人であり,海上運送では傭船者(傭船契約の場合)または荷送人(個品運送の場合)である。旅客運送契約の当事者は,運送人と運送の依頼人すなわち通常は旅客自身である。航空運送の場合も,海上運送契約に準じて考えてよい。
荷受人(目的地で運送品を受け取る者)は,荷送人自身であってもよい。貨物引換証や船荷証券が発行されていない場合には,荷受人は,到達地への運送品の到着とともに運送品引渡請求権を取得する(商法583条1項)。貨物引換証や船荷証券が発行されている場合には,運送人に対して運送品の引渡しを請求できる者は,これらの証券の所持人である。ただ,実際界では,これらの証券と引換えでなく運送品を引き渡す場合(仮渡し・保証渡し)が少なくなく,この慣行は,とくに海上運送の場合に多い。
→運送人 →海商法
執筆者:石田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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