証券に表章された権利を裏書によって譲渡することのできる有価証券。手形,小切手がその典型である。これに対して,指名債権譲渡の方法によらなければ譲渡できない有価証券を記名証券,単に証券の交付だけで譲渡できる有価証券を無記名証券という(〈記名証券・無記名証券〉の項参照)。指図証券とは,もともとは,証券の発行者が,証券上に特定の者(たとえば,A)を権利者として指定するとともに,その権利者AまたはAから順次に--AからBへ,BからCへと--指図した(裏書の方法で指示した)他の者も権利者となることができる旨の文言(指図文句という--上記金額をあなたまたはあなたの指図人へお支払いたします--など)を記載している証券をいう。ところが,このような指図証券は,裏書という簡易な手続で権利を譲渡できること,善意で証券を取得した者の保護が図られていること(抗弁の切断--民法472条など)などから,きわめて流通に適した証券である。そこで,流通を予定している有価証券のほとんどは,たとえ特定の者を権利者として指定するだけで,指図文句の記載がない証券についても,法律の規定によって裏書譲渡できるものとされている。これらを〈法律上当然の指図証券〉という。手形(手形法11条),小切手(小切手法14条),貨物引換証(商法574条),倉庫証券(603条),船荷証券(776条),抵当証券(抵当証券法15条)がこれである。ただし,証券に指図禁止(裏書禁止)の文言が記載されている場合には,裏書による譲渡は認められない。法律上当然の指図証券でないもので指図証券として発行されている例はきわめて少なく,譲渡性定期預金証書(CD)がその例である。
なお,指図証券に表章される権利が債権である場合,その権利を指図債権という。民法および商法に,債権譲渡の対抗要件,善意の譲受人保護などについて規定がある(民法469条,470条,472条,商法516条2項~519条)。このうち,民法469条が証券の裏書・交付を譲渡における第三者の対抗要件としている点は,裏書・交付を譲渡の成立要件とし認める有価証券法理に反するため,修正した解釈がなされている。
執筆者:清水 巌
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証券上に権利者として表示された特定の者またはその指図人を権利者とする有価証券。記名証券に対する概念。指図人とは、裏書によりその証券を譲り受けた者のことであり、指図証券は裏書によって譲渡することができる有価証券である。
指図証券には、証券に「甲殿又はその指図人に」というように、指図文句により特定の者またはその指定する者が証券上の権利者になる旨を明記する場合のほかに、そのような指図文句がなくても法律上当然に裏書が可能とされるものがある。後者を法律上当然の指図証券という。この場合は、形式上記名式で特定の者が権利者として記載されていても、裏書による譲渡が可能である。手形、小切手、貨物引換証、船荷証券、倉庫証券などがこれに属する(手形法11条、小切手法14条1項、商法574条・603条・627条2項・776条)。
[戸田修三]
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