賜・給(読み)たまわる

精選版 日本国語大辞典 「賜・給」の意味・読み・例文・類語

たまわ・る たまはる【賜・給】

〘他ラ四〙
[一]
① 物や言葉などを受ける、もらうの意の謙譲語で、くれる人を敬う。いただく。頂戴する。また、人などをよこしていただく。たばる。とうばる。
書紀(720)天武五年四月(寛文版訓)「諸王、諸臣の被(タマハル)封戸の税は」
※続日本紀‐神護景雲三年(769)一〇月一日・宣命「此の賜ふ帯を多麻波利弖(タマハリて)、汝等(いましたち)の心をととのへ直し」
平家(13C前)四「ちからをよばで、わが郎等競の滝口をめして、これをたぶ。給はてすててんげり
② 特に、神から通行の許しをいただく。神の許しを得て通らせていただく。
万葉(8C後)二〇・四三七二「足柄の み坂多麻波里(タマハリ) かへりみず あれは越(く)え行く」
③ (中世以降の用法) 物などをくれるの意の尊敬語。くださる。たばる。たもうる。たもる。
たまきはる(1219)「候(さぶら)ふかぎりの人々に薫物(たきもの)大きにまろがして、衣筥(ころもばこ)のふたに人のかずにしたがひておきならべて給はる」
※御伽草子・文正草子(室町末)「御はからひにて給はり候へ」
[二] 補助動詞として用いる。動詞連用形、また、動詞に「て」のついた形につく。
① ((一)①の補助動詞用法) 「てもらう」の意の謙譲語。…ていただく。
今昔(1120頃か)二〇「今度の罪、己れに免(ゆる)し給らむと」
② (中世以降、(一)③の補助動詞用法) 「てくれる」の尊敬語。…てくださる。
謡曲隅田川(1432頃)「われをも船に乗せて賜はり候へ」

たば・る【賜・給】

〘他ラ四〙
① 物を受ける、もらう意の謙譲語。いただく。頂戴する。たまわる。
※催馬楽(7C後‐8C)鷹の子「鷹の子は まろに多波良(タバラ)む」
※虎明本狂言・鞍馬参(室町末‐近世初)「なんぢはいつもくらまへ参るが、福をたばった事はなひか」
② 特に、神から通行の許しをいただく。神の許しを得て通らせていただく。たまわる。
※万葉(8C後)二〇・四四二四「色深く背なが衣は染めましを御坂(みさか)多婆良(タバラ)ばまさやかに見む」
③ (中世以降の用法) 物などをくれるの意の尊敬語。下さる。たまわる。
日葡辞書(1603‐04)「Tabatta(タバッタ)〈訳〉 Tabari, u(タバル)の過去形。〈略〉ゴフクヲ tabatta(タバッタ)。すなわち、タカラヲ タマワッタ」
[語誌](1)タマフに対するタブと同じく、タマハルの縮約形であろう。タマハルより敬意度は低く、目下の者からもらう場合や戯れに用いられた例もある。
(2)タマフとタブの場合は尊敬語と謙譲語が四段活用と下二段活用とに分かれるが、タマハルとタバルの場合は同活用に両敬語が併存する。タテマツルなどと同じく謙譲語が尊敬語に転用された結果である。

とうばり たうばり【賜・給】

〘名〙 (動詞「とうばる(賜)」の連用形の名詞化) いただくこと。また、いただくもの。「御とうばり」の形で、貴人などの特別の恩顧によって官職などをいただくことをいう。たまわり。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「大学・勧学院といふものは、〈略〉たうばりをおきたるところ」

たうばり【賜・給】

たう・ぶ【賜・給】

〘他バ四〙 ⇒とうぶ(賜)(一)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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