貸し金の担保に子女を差し出させて働かせる奉公契約。借銭の返済期限まで「人質」として働かせるが、その間の労働は無償で、それが利息に見合う形になる。そして期限がきても借銭未済の場合は「質流れ」になってまったくの「下人」身分になる。しかしその後、借銭を返済すれば「請け戻し」できる約束の形が近世初期以後は通例になった。こうした質物奉公は人身の「年季売り」、つまり身代金(みのしろきん)を返済すれば身柄が引き取れる「本金返し」の奉公と実質的にはまったく変わらない。そしてこの二つの奉公形態は並行して広くみられもした。人身の永代売買は近世初頭以後厳禁されたが、年季を限っての「身売り」や「質物」としての人身提供は許容されたので、こうした形が広く残り、「身売り奉公」「人質奉公」ともよばれた。やがて奉公中の労働に対価が生じて「居消質(いげししち)」の形に移行し、人質の労働で本利の返済にあてることになる。そこには、人質奉公中の給金と本金利子の総額を計算し、不足分を返済して請け戻す形と、奉公中の労働で元利金の全部を消却する形とがあって、むしろ後者の形が多くなっていく。そしてこれと給金前借方式の年季奉公とは実質上大差なく、しだいに年季切りの「前借奉公」が一般化するが、なおこの形も「身売り奉公」「質奉公」と広くよばれていた。
[竹内利美]
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