質物奉公(読み)しちもつぼうこう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

質物奉公
しちもつぼうこう

貸し金の担保に子女を差し出させて働かせる奉公契約。借銭の返済期限まで「人質」として働かせるが、その間の労働は無償で、それが利息に見合う形になる。そして期限がきても借銭未済の場合は「質流れ」になってまったくの「下人」身分になる。しかしその後、借銭を返済すれば「請け戻し」できる約束の形が近世初期以後は通例になった。こうした質物奉公は人身の「年季売り」、つまり身代金(みのしろきん)を返済すれば身柄が引き取れる「本金返し」の奉公と実質的にはまったく変わらない。そしてこの二つの奉公形態は並行して広くみられもした。人身の永代売買は近世初頭以後厳禁されたが、年季を限っての「身売り」や「質物」としての人身提供は許容されたので、こうした形が広く残り、「身売り奉公」「人質奉公」ともよばれた。やがて奉公中の労働に対価が生じて「居消質(いげししち)」の形に移行し、人質の労働で本利の返済にあてることになる。そこには、人質奉公中の給金と本金利子の総額を計算し、不足分を返済して請け戻す形と、奉公中の労働で元利金の全部を消却する形とがあって、むしろ後者の形が多くなっていく。そしてこれと給金前借方式の年季奉公とは実質上大差なく、しだいに年季切りの「前借奉公」が一般化するが、なおこの形も「身売り奉公」「質奉公」と広くよばれていた。[竹内利美]

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精選版 日本国語大辞典の解説

しちぶつ‐ほうこう【質物奉公】

しちもの‐ぼうこう【質物奉公】

〘名〙 江戸時代の人身担保の一つ。奉公人前借金を受け取り、債権者である主人のもとで働き、前借金(身代金)を返済してから暇をとるもの。給金を身代金の一部および利子の弁済にあてる場合もあった。質奉公。しちぶつほうこう。
※聞伝叢書(1781か)「於在々奉公人召抱候節、質物奉公と唱、たとへば奉公人一人給金三両の定外に金五両年弐割の利付にて奉公人へ賃渡」

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