中世における,領主・主人・村からの逃走者の呼称の一つ。逃者・逃人・出百姓(でびやくしよう)などともいう(《相良氏法度》《塵芥集》〈高梨文書〉)。逃亡を〈走る〉と表現する例は中世に広くみられるが,走者という語法はそれほど一般的ではない。その実態は被官・中間(ちゆうげん)・下人・百姓など多様であるが,逃散(ちようさん)のような組織的な公然たる抵抗をあらわす逃亡よりは,むしろ走入(はしりいり)・欠落(かけおち)など,負債や困窮を原因とする個別的なひそかな逃亡についていい,中世を通じてその例は多い。そのため村落の内部で〈はしり候者見かくし候はば,となり三間として御年貢納所仕るべし〉(《今堀日吉神社文書》)と,走者を隣人の連帯責任として規制した村掟もみられる。とくに領主間ないし主人間で逃走者の帰属をめぐる紛争が絶えなかったため,鎌倉幕府法から一揆の法,戦国家法にいたるまで,数多くのいわゆる人返し法(人返し)が作られた。それは走者自体の禁令というよりは,主として逃走者の連戻しのための手続法であった。その法は戦国期には〈国法〉として強調され,近世初頭になると,走者は一族ともに死刑で見逃した者も同罪(《長宗我部元親百箇条》)とか,走者に宿かすべからず(《吉川氏法度》)というように,逃走そのものの規制がいちじるしく強化される。
執筆者:藤木 久志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…日本中世とくに戦国時代において,人々が軍役・貢租の負担や戦禍から逃れるため他領に流亡することを欠落といった。欠落人は被官(下級武士)から農民諸階層にわたった。農民層の場合,村ぐるみの組織的な逃散(ちようさん)とくらべて,とくに小百姓,下人など隷属的な階層の個別・散発的な家族ぐるみの欠落が著しく,欠落の行先は近隣の農村よりは他領の宿場や城下,門前など遠く離れた町場の例が数多く知られる。より自由な都市的な場への流入とみることができよう。…
…
[中世]
荘園制下の農民が,その家屋敷・田畠をすて荘外に逃亡することで,領主に対する抵抗の一形態。逃散には,個々の農民が行うもの(欠落(かけおち))と,集団で行うものとがあったが,惣村の成立以後,後者は自覚的な抵抗形態となり,逃散は単なる逐電と区別されるようになった。荘園制下の農民は,年貢課役の減免,非法代官の罷免などの要求を通すため,しばしば一揆を結成し,強訴(ごうそ)を行ったが,なお要求が認められない場合,最後の手段として全員が荘外に逃亡する逃散を行った。…
※「走者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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