広義には株式を含む証券発行市場一般をさすことがあるが、一般には債券(公・社債)発行市場をいう。起債とは債券を発行して長期資金を調達することを意味し、株式の発行を起債とはいわない。起債市場を構成するのは、発行者(資金需要者)と応募者、および両者を媒介する証券会社、銀行、信託銀行、保険会社などであり、これら媒介機関は機能的に引受会社、受託会社に大別される。このうち実際上は銀行などの金融機関引受けが大半となっている。発行者として、事業会社は社債を、国および地方公共団体は国債・地方債を、債券発行銀行は各種の金融債を、特殊法人や独立行政法人は政府保証債や財投機関債を発行する。
起債の方法には、直接発行あるいは公募発行(起債会社・公共団体などが自ら発行する)と、間接発行あるいは非公募発行とがあるが、需要資金の規模や調達手続の複雑さなどから、日本では間接発行が多い。直接起債する直接発行方式では自己募集、売出し発行などに分かれるが、私募private placementとよばれる大口投資家向けの直接募集がアメリカではみられる。間接発行は専門の仲介(媒介)機関を利用するため、資金調達が迅速に行われるという長所がある。その方式には、売り残り分を引き受ける引受募集、単なる募集委託、委託募集、総額引受募集があるが、応募不足の危険を避けるために引受募集方式が一般的である。
発行価格については、株式と同じように額面価格と違った市場価格が独自の要因によって決められるが、債券の場合は、それ自体の独自の要因に加えて、債券の額面価格が決定的要因となっている。これは、債券購入者と債券発行者の基本的関係が債券を媒介とした債権・債務関係にあるから、その債権・債務の金額の確定のためにも額面価格が重要な意味をもつからである。しかし、これらの関係は単なる貸借関係とは異なるから、発行価格の決定には市場利子率の影響を当然受けるが、それも表面利率、償還期限、償還方法など各種要因の組合せで決定される。発行価格は市場の状況により変動を受けるが、株式のような変動はない。日本の起債市場は、流通市場と比べて整備されてはいないため、債券の引受けが金融機関に偏っているが、今後、市場の実勢による発行条件の弾力化や個人投資家への積極的な消化促進が重要な施策の一つと考えられる。同時にそれは流通市場育成の基盤ともなるのである。
[桶田 篤・前田拓生]
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