新たに会社を設立したり個人事業を始めたりすること。既存企業や個人事業の新規事業開発ではなく、ゼロから立ち上げる場合が該当する。起業する事業の内容の新規性や革新性の有無は問わない。ラーメン店やケーキ屋、ウェブ制作会社、ビルメンテナンス会社などから、ハイテク・スタートアップまで、事業内容や形態はさまざまである。
日本では、毎年の起業数を正確にとらえた統計は存在しない。法務局は法人(株式会社、合同会社、組合、公益法人等)の新規法人登記件数を公表しているが、このなかには既存の個人事業から法人成り(法人化)したものや、既存企業等の子会社として設立された法人も含まれている。個人事業については、新規設立の際、所管の税務署に個人事業の新規開業届を提出するが、個人事業新規開業総数は公表されていない。
正確な起業数は把握できないが、世界40~50か国が参加して毎年実施されている起業家活動および起業環境に関する調査「グローバル・アントレプレナーシップ・モニターGlobal Entrepreneurship Monitor:GEM」によれば、起業数に類似する数値として、起業準備中の者および起業から3年半以下の者が18歳から64歳の人口に占める割合「総合起業活動Total Early-Stage Entrepreneurial Activity:TEA」指数を計上しているが、日本は毎年の調査で他国・地域よりTEAが低くなっており、おおむね、下位5位程度の位置である。TEAは中南米諸国など、経済状況が厳しく、安定した仕事につくことがむずかしい国・地域において高くなっているが、これは生計をたてるために起業する者が多いせいである。日本は労働力人口が減少しており、多くの企業や組織が人手不足に直面しているため、仕事のミスマッチはあるものの、企業や組織に就職することは比較的容易である。そのため、生業としての起業よりも、自己実現や時間・場所に縛られない自由な働き方を求めて起業するケースが多い。一方、社会保険や雇用保険などは被雇用者を念頭に制度がつくられている面があり、起業して自営業者などになると、年金受給額や失業手当、労災保険などにおいて被雇用者より不利な状況になることがあり、起業が諸外国に比べて少ない原因の一つになっている面もある。
最近は、従業員の副業・兼業を認める企業も増加しており、会社等を辞めずに副業として新たな事業を始める者も出てきているが、そのようなケースを副業起業とよぶこともある。
[鹿住倫世 2024年3月19日]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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