静電気を集めて高い電位を得るための装置。静電起電機ともいう。1663年ごろに,ゲーリケは回転する硫黄の球を手で摩擦して,かなりの静電気を得た。これは摩擦電気を利用した起電機で,その後改良され,初期の電気研究に用いられたが,18世紀後半になると静電誘導の現象を利用した起電機が主流となった。
(1)電気盆 1775年にA.ボルタが発明したもので,図1のように絶縁体の柄をつけた金属板とエボナイト板からなる。あらかじめ摩擦により負の電荷を帯電させたエボナイト板に金属板を近づけ,同時に金属板を接地すると,金属板は静電誘導により正に帯電する。接地をはずした後,金属板をエボナイト板から引き離してその正電荷をライデン瓶(コンデンサーの一種)に与える。この操作を繰り返せば,エボナイト板の帯電が続くかぎり,多量の電荷を集めることができる。クーロン力に逆らって金属板を運ぶには仕事が必要であるから,電気盆は機械的な仕事を電気的エネルギーに変換している。電気盆をきっかけにして,静電誘導を利用する多くの起電機が発明されたが,その中では,イギリスの技術者のJ.ウィムズハーストが,1882年ごろつくった回転運動を利用して連続的に電荷を集めるようにした起電機がとくに有名である。
(2)水滴起電機 ケルビンが1867年に発明したもの。図2に示すように,ノズルを出た水滴が金属円筒A,A′の中を通って,金属容器B,B′まで落下する。はじめ円筒Aが(なんらかの理由で)負に帯電していると,ノズルを出る水滴は静電誘導により,左側では正に,右側では負に帯電する。水滴の電荷は容器B,B′において外側の導体に移り,これがそれぞれ円筒A′,Aの帯電を強める。この繰返しにより容器B,B′の電位が上がる。水滴は容器からクーロン斥力を受けるが,重力の助けにより容器に達する。すなわち水滴の位置エネルギーが静電エネルギーに変換されるのであり,この非凡な着想がこの起電機の特色である。
(3)バン・デ・グラーフ起電機 以上の起電機はすべて歴史的なものであるが,1930年ごろにバン・デ・グラーフが発明した起電機は,原子核反応のための加速器として現在も広く用いられている。
→加速器
執筆者:加藤 正昭
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…コロナ放電や静電誘導などで発生させた電荷を,高電圧電極に運搬集積して高電圧を発生させる装置。1931年アメリカのバン・デ・グラーフR.J.Van de Graaffによって考案されたベルト発電機が代表的な例である。図に示すように針電極1に直流電圧Vを加え,接地した平板電極2との間でコロナ放電を発生させる。図はVが正の場合を示しているが,負なら負極性の高電圧が発生する。1~2間に絶縁物のベルトを置き,針先端のコロナ放電で生じた電荷をベルトに付着させる。…
※「起電機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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