超国家主義(読み)チョウコッカシュギ(その他表記)ultranationalism

翻訳|ultranationalism

デジタル大辞泉 「超国家主義」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐こっかしゅぎ〔テウコクカシユギ〕【超国家主義】

極端な国家主義。第二次大戦前の日本ナチス‐ドイツがその典型的な例。

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精選版 日本国語大辞典 「超国家主義」の意味・読み・例文・類語

ちょう‐こっかしゅぎテウコクカシュギ【超国家主義】

  1. 〘 名詞 〙 極端な国家主義。
    1. [初出の実例]「大川周明直系の、今の用語でいえば超国家主義者のグループである」(出典:堕落(1965)〈高橋和巳〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「超国家主義」の意味・わかりやすい解説

超国家主義 (ちょうこっかしゅぎ)
ultranationalism

ある民族ないしは国民が国民国家nation stateを形成・発展させる過程で,ナショナリズム(民族主義,国家主義,国民主義)の契機を極端に膨張・拡大し,自民族至上主義,優越主義を他民族抑圧・併合とそのための国家的・軍事的侵略にまで拡大して国民を動員・統合・正統化する思想・運動ないしは体制のこと。第2次大戦前の日本の天皇制イデオロギーにおける〈大東亜共栄圏〉〈八紘一宇〉,ナチス・ドイツにおける〈血の純潔〉〈大地の確保〉などは超国家主義思想の典型とみなされる。

 日本でこの概念が用いられるようになったのは,1945年の敗戦を機に連合軍の初期占領文書が日本の〈軍国主義・超国家主義〉一掃をかかげたことによるが,広く知られるようになるのは,丸山真男の論文〈超国家主義の論理と心理〉(《世界》1946年5月号)によってであった。丸山は超国家主義を近代国家のナショナリズム一般に内在する武力的膨張傾向,帝国主義的・軍国主義的傾向と区別し,〈対外膨張乃至対内抑圧の精神的起動力に質的な相違が見出される〉点を挙げ,明治以来の天皇制国家イデオロギーをナチス・ドイツとは区別される超国家主義であるとした。この把握では,明治以来の伝統的国家主義と昭和期の超国家主義が区別できず,またもっぱら特殊日本的概念とされてしまうため,天皇を〈伝統のシンボル〉よりも〈変革のシンボル〉とした民間右翼に超国家主義を限定する橋川文三らや,産業資本主義段階の自由主義的ナショナリズムと段階を異にする金融独占資本主義段階の膨張主義的ナショナリズムのとくに病的なものとしてより広く国際的にみる安部博純らの批判が出されている。この国際的ファシズムの一特徴を指すものとしての超国家主義においては,ナショナリズムの膨張主義的契機と〈生存圏〉思想が,その中核となる。この思想をになう運動・政治体制も,超国家主義とよばれる。
ナショナリズム
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「超国家主義」の意味・わかりやすい解説

超国家主義
ちょうこっかしゅぎ
ultra-nationalism

近代国民国家において、自国の発展を志向するナショナリズム(国家意識・民族意識・国民意識)が極端な形にまで推し進められ、国家至上主義・軍国主義・侵略主義が結合した反動的国家・政治思想。自由主義・民主主義・社会主義・平和主義・国際主義を否定する。歴史的には、ナチ政権下のドイツ、十五年戦争下の日本にみられる国家思想がその典型例である。

 そもそも国民国家は、言語・文化・歴史・伝統などを共通のものとして有する一民族あるいは複数以上の民族を基盤に形成され、対内的には、国民の生命・自由・財産の安全を確保し、対外的には外敵からの侵略を防止するために、一つの権力、一つの法律によって全国民を統治し、民主的な政治運営を図ることを目ざした政治社会である。この際、こうした国民国家の維持・発展途上において、国家的統合を優先させてまず国家権力の拡大強化を図るか、国民の人権や自由を尊重しつつ経済的繁栄を求めて国家の安定を図るか、という二つの路線が絶えず交錯した。日本・ドイツは前者の、イギリス・フランス・アメリカなどは後者の路線をとったものといえよう。

 たとえば、日本では、明治憲法体制成立後、日清(にっしん)・日露戦争を経過するなかで、政府は厳しい国際状勢を理由にますます国家権力の拡大を図り、それに対して、陸羯南(くがかつなん)や田口卯吉(うきち)のような人々は、自由主義・民主主義を擁護して、政府の国家優先主義に対して、国民優先主義を唱えた。羯南や卯吉も、明治維新以後のとうとうたる欧化主義には批判的であり、国際社会における日本の自立・独立を強く主張したが、国家の個人に対する絶対的優位を説く国家思想には反対した。したがって、ナショナリズムのなかにも、国家主義と国民主義という二つの思想潮流が存在し、満州事変以後の日本は、「東洋平和のため」という理由の下に、前者の国家主義が極端化して超国家主義となり、「八紘一宇(はっこういちう)」「日本民族の優越性」を旗印にアジア諸国への侵略戦争を行ったのである。ナチ政権が、「血の純潔」「血と大地」「ゲルマン民族の優越性」を掲げて、第二次世界大戦を引き起こしたのも超国家主義的行動によるものであったといえよう。

[田中 浩]

『田中浩著『近代日本と自由主義』(1993・岩波書店)』

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百科事典マイペディア 「超国家主義」の意味・わかりやすい解説

超国家主義【ちょうこっかしゅぎ】

ultranationalismの訳。国家主義の極端な一形態。外に対しては露骨な排外・侵略主義をとり,内に対しては国家権力による全体主義の体制がとられる。
→関連項目右翼

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旺文社日本史事典 三訂版 「超国家主義」の解説

超国家主義
ちょうこっかしゅぎ

日本における,天皇制の絶対化と国家至上主義を唱える極端なナショナリズム
日本文化の優越性を強調し,天皇中心の国家政策への従属を求め,個人の自由を無視した。

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世界大百科事典(旧版)内の超国家主義の言及

【ヨーロッパ連合】より

…〈国際統合〉のダイナミックスとは,構成国が国家の心情的属性(ナショナリズムとか国家に対する忠誠心)や行動的属性(国家の対外政策の決定権とか政治的自立性)を,漸進的に新たな超国家的共同体に委譲していく政治過程を意味する。それは,〈超国家主義supranationalism〉のダイナミックスといってもよい。事実,EECを発足させたローマ条約は,まず構成諸国間のモノの自由移動を達成するため,域内の関税や数量割りを廃止し,対外的に共通関税を設定する関税同盟を樹立することを目的としており,同時にあらゆる非関税障壁を撤廃して,モノだけでなく,ヒト,サービス,資本が自由に移動できる共同市場を構築することを目的としている。…

※「超国家主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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