足立(区)(読み)あだち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「足立(区)」の意味・わかりやすい解説

足立(区)
あだち

東京都の北東部にある区。北は埼玉県に接する。1932年(昭和7)旧南足立郡の千住(せんじゅ)、西新井、梅島の3町および江北舎人(とねり)、綾瀬(あやせ)、東淵江(ひがしふちえ)、花畑(はなはた)、淵江、伊興(いこう)の7村が合併して成立。区域は併行する隅田川(すみだがわ)および荒川と、中川に囲まれた沖積低地で、ほかに区内東部に綾瀬川、北境にその支流の毛長(けなが)川が流れる。

 『続日本紀(しょくにほんぎ)』に武蔵(むさし)国足立郡、『和名抄(わみょうしょう)』に阿太知とあり、開発の古さがうかがい知れる。本格的な新田としての開発は江戸時代からで、主として淵江領と称し幕府直轄地であった。奥州街道(日光街道)(国道4号)が中央部を南北方向に通り、南端の千住は宿場町として繁栄した。826年(天長3)創建と伝える西新井大師(にしあらいだいし)(五智山総持(そうじ)寺)は、神奈川県の川崎大師とともに厄除(やくよけ)大師として古くからにぎわっている。

 千住と西新井を除けば長く農村地帯であったが、関東大震災後から住宅、住居併用の中小工場や、商店が集中するようになり、第二次世界大戦後はいっそう都市化が進展し、著しく人口が増加した。靴、鞄などの地場産業があるほか、家具木工、金属加工、精密加工などの中小工場が多数立地している。JR常磐(じょうばん)線が南端を通りそれに沿って東京地下鉄千代田線が北綾瀬駅まで通じている。中央部を南北に通る東武伊勢崎(いせさき)線は、西新井大師へ支線の大師線を出し、北千住では東京地下鉄日比谷(ひびや)線と接続する。北千住は、これらの交通網の中心で、商業中心地。ほかに京成電鉄本線が千住を横断し、つくばエクスプレスが通じる。また、2008年(平成20)には新交通システム日暮里・舎人(とねり)ライナーが開通した。首都高速道路中央環状線、6号三郷(みさと)線、川口線および国道4号が区内を走っている。おもな名所としては、西新井大師のほか、中川堤および荒川堤のサクラ、獅子(しし)舞と酉(とり)の市(いち)で知られる花畑の大鷲神社(おおとりじんじゃ)(江戸時代、武家は花畑、町家は吉原の鷲(おおとり)大明神と信者を二分した)などがある。面積53.25平方キロメートル、人口69万5043(2020)。

[沢田 清]

『『足立区史』(1955・足立区役所)』『『足立の歴史』(1965・足立区役所)』『『新修足立区史』上下(1967・足立区役所)』


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