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軍産複合体 ぐんさんふくごうたいmilitary-industrial complex

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

軍産複合体
ぐんさんふくごうたい
military-industrial complex

戦争から経済的利益を得る政治的・経済的集団,特に戦争に迎合する産業にかかわっている集団のこと。先進諸国に顕著にみられる事態であるが,アメリカにおける国防総省 (ペンタゴン) を中心とする軍部と巨大な軍需産業群との癒着した関係や相互依存体制をさす場合が多い。第2次世界大戦の過程で巨額の軍事支出,税制上の優遇措置,政府の軍需生産施設の貸与や払下げなどを通してアメリカ経済の軍事化が急速に進展したが,戦後も冷戦状況のもとで軍部と軍需産業部門との結びつきは強まり,特に朝鮮戦争以後両者の協力ないし相互依存体制は人的交流や兵器の研究,開発部門にまで及んだ。こうして軍産複合体は政治的,経済的に,さらには研究開発面においても巨大な影響力をもつにいたり,1961年 D.アイゼンハワー大統領が退任演説のなかで「民主主義への脅威」になっていると警告を発したほどであった。

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知恵蔵の解説

軍産複合体

軍事・外交政策を、軍拡に適合する方向に向けようとする国内的諸集団の連携構造。米国では、軍官僚制、兵器産業、軍事研究機関、軍事関係議員などの間の人的・資金的な結び付きを指す。軍、軍需産業、軍事研究機関が国家官僚組織に組み込まれた旧ソ連では、1930年代以来、軍事部門が予算、人材などを優先的に配分され、民需部門に比べて、高い生産効率と技術を保っていた。これを軍産官複合体とも呼ぶ。

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

ぐんさん‐ふくごうたい〔‐フクガフタイ〕【軍産複合体】

第二次大戦後、米国のアイゼンハワーが用いた言葉で、軍部とある産業とが結びつき、国内の産業経済に大きな影響を及ぼしている体制のこと。MIC(military-industrial complex)。

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百科事典マイペディアの解説

軍産複合体【ぐんさんふくごうたい】

military-industrial complexの訳。軍産共同体あるいは軍部・産業ブロックともいう。政府・軍部などと軍需産業の拡大によって利益を得る産業界による相互依存体制のこと。

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世界大百科事典 第2版の解説

ぐんさんふくごうたい【軍産複合体 military‐industrial complex】

軍事産業の維持・発展を積極的に推進することを目的にした一種の利益追求集団の総体。日本では産軍複合体ということもある。政府や官僚機構,軍部,議会,財界労働組合,政党や圧力団体,あるいは軍事技術の急速な進歩に伴って学界や研究機関などで構成され,これらが相互補完的に影響力を行使して軍事支出の拡大や兵器調達の増大をはかる強力な結合関係を構築している。現在では軍産官学複合体という言葉で表現され,旧ソ連をはじめとする社会主義諸国では,共産党,軍部,官僚,軍事産業部門による中央集権的な軍産複合体が形成されていた。

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大辞林 第三版の解説

ぐんさんふくごうたい【軍産複合体】

軍部と軍需産業とが密接に結びつき国内の産業経済に大きな影響力をもっている体制。産軍複合体。 MIC 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

軍産複合体
ぐんさんふくごうたい
militaryindustrial complex

政府の国防支出に大きく依存する軍部、民間企業、政治家たちが、それぞれの利益のために有形無形の連携を保ちつつ、ときにはマスコミ界も参加して、国防支出の増大を図る社会的な癒着構造をいう。軍産複合体という用語は、アメリカのアイゼンハワー大統領が1961年の退任演説で軍産複合体の存在を警告して以来、政治用語として定着した。一般に兵器調達は、独特な価格決定、独占的な納入手続き、厳重な機密扱いなど、通常の商取引とは異なる方法で行われるため、軍部と産業界の間で癒着が生じやすい。これに政治家、大学などの研究機関が加わることもある。アメリカは第二次世界大戦では「民主主義の兵器廠(しょう)」とよばれ、連合国側の戦争資材の供給に大きな役割を果たしたが、その反面、経済全体が政府支出、とくに国防支出に大きく依存する体質から脱し切れなくなった。第二次世界大戦後、朝鮮戦争(1950~53)やベトナム戦争(1964~73)によって戦争関連産業が潤った事実をみても、経済の軍需依存を如実に反映している。反面、アメリカの戦争介入は参戦兵士の犠牲が大きく、このためアメリカは地域の安全保障は関係国の自助努力による方針(ニクソン・ドクトリン)に転換したものの、高度先端技術を駆使した軍用機、ミサイル兵器、戦闘車両、艦艇などの供給国としての地位は確保する必要があるため、兵器の内需以外に各国に兵器の購入を迫る、いわゆる外需も併用してアメリカの軍需産業の保持、育成の方針には変わりなく、軍産複合体の体質はいぜんとして続いている。なおフランス、ドイツ、日本などでも兵器関連産業界の国防支出依存という体質が定着化しつつある。[藤村瞬一]
『小原敬士編『アメリカ軍産複合体の研究』(1971・日本国際問題研究所)』

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世界大百科事典内の軍産複合体の言及

【アメリカ合衆国】より

…アメリカは少し過敏なほどに安全保障問題を意識するにいたり,ソ連の軍事力を直接的脅威として,国内のみならず海外の多数の基地を含む巨大な軍事機構を常時維持するようになった。それに伴い,膨大な軍需産業がアメリカ経済の中で大きな地位を占めるにいたり,〈軍産複合体〉の存在が指摘されるようになる。
[統帥と文民統制]
 合衆国憲法の下で,大統領は全軍の最高司令官として,合衆国防衛の最高責任者の地位にある。…

【軍拡】より

…また帝国の維持のために,被支配民族の抵抗を平定する目的で,巨額の軍事費や軍備を投入して弾圧や植民地戦争を行うことも珍しくない。 第3は,軍部や軍産(官)複合体などの,自己保存と自己肥大化の力学である。つまり第1の拮抗作用による軍備競争や,第2の帝国主義支配のための軍拡が直接の契機であるにしろ,そうした軍拡のレールがいったん敷かれると,もともとは軍拡の手段として強化された軍部や,軍拡に付随して生まれた軍産官複合体が,今度はその組織や既得権益そのものの維持・肥大を自己目的とし,その手段として対外的な軍拡競争や小国への軍事介入などを行うようになる。…

【軍事政権】より

…生産力と交通関係との関係も軍隊のなかではとくに明瞭である〉(《経済学批判への序説》)と述べたが,軍隊においては,近代政治の一つの要件としての合理性・計画性・効率性原則が,その戦闘時における実践的必要という面から,早くから発達してくる。また近代の武器および戦闘技術の発展は,経済発展の不可欠の環として軍事技術と産業技術の相互依存関係をつくりだしており,いわゆる軍産複合体,すなわち高級官僚層・財界指導部・政治エリートと軍隊指導部(軍エリート)との結合も不可避的に進展している。したがって徴兵制軍隊であれ志願制国民軍であれ,軍部中枢については〈政治的中立〉はほとんどたてまえのみのものとなっており,多くの場合,軍エリートは軍部・軍閥として,全体的政治構造のなかで支配的経済エリート・政治エリートと結びつき,重要な政治的役割を果たしている。…

【軍縮】より

… だが政治的民主主義体制のもとであっても,なお軍縮を妨げる二つの要因があることは,アメリカの例がよく示している。
[軍産複合体と軍縮問題]
 その一つは,国際関係がどうかとは独立に軍拡や兵器開発を利益として推進する国内勢力が,外交・軍事政策に大きな影響力をもつような政治・経済構造である。アメリカその他の〈軍産複合体〉がそれであり,旧ソ連のように国家官僚機構にくり込まれている場合には〈軍産官複合体〉の形をとった。…

※「軍産複合体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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