改訂新版 世界大百科事典 「農事季節」の意味・わかりやすい解説
農事季節 (のうじきせつ)
自然の季節の移り変りによって変化する農事現象の総称。農作業の季節現象と農作物自体の季節現象(作物季節)のほか,病害虫に見られる季節現象を含む。その土地の気候の年変化に応じて,毎年決まった時期に農作物が栽培されるので,それに必要な農作業も決まった時期に行われる。例えば耕耘(こううん),整地,苗代,播種,中耕,土寄せ,除草,追肥,薬剤散布,収穫,採取などの作業の時期がそれである。これらの作業は,果樹や養蚕など対象によっても異なり,それぞれの農事季節がある。作物季節は,それぞれの作物の発芽,出穂,開花,成熟(結実)などの時期である。作物自体の性質とその土地の気候により決まる季節現象であることはいうまでもないが,播種や栽培の時期や耕作の形態などの影響も受ける。農事季節は農民にとっては,一年の生活を制約する要因の一つで,暦の上でも農事暦が古くから農民の生活と密接な関係があった。
執筆者:河村 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報