日本大百科全書(ニッポニカ) 「農政本論」の意味・わかりやすい解説
農政本論
のうせいほんろん
江戸時代の農政書。佐藤信淵(のぶひろ)が1829年(文政12)に薩摩(さつま)藩の重臣猪飼(いかい)央のために筆記奉呈したもので、刊行は1871年(明治4)である。佐藤家5代の農政学の総合と自称されたもので、初編はわが国農政の沿革に始まり、わが国古来の田制(でんせい)の大要を述べて検地に及び、中編では主として貢租、夫役(ぶやく)について論じ、後編では手代(てだい)、検見(けみ)、歩刈(ぶかり)法、年貢収納法、万民率育(ばんみんそついく)法並(ならびに)祭礼法などについて記している。そのなかで農政を明らかにし、富農による土地兼併を百姓困窮の一因とみ、万民の困窮を救って永久に国家の富盛をいたすべき方策を論じ、百姓をして農事を楽しませるには神事を愉快にするにあると論じていることは本書の大きな特徴である。『佐藤信淵家学全集』中巻、『日本経済大典』第19巻所収。
[三橋時雄]
『大西伍一著『日本老農傳』(1933・平凡社)』▽『滝本誠一著『日本経済典籍考』(1928・日本評論社)』