辺塞詩(読み)ヘンサイシ(その他表記)biān sài shī

デジタル大辞泉 「辺塞詩」の意味・読み・例文・類語

へんさい‐し【辺塞詩】

中国唐代の詩で、辺境地帯の風土自然をうたったもの。西域の諸民族との抗争が増えた盛唐期に、高適岑参しんしん王昌齢などがこの分野特色を発揮し、辺塞詩人といわれた。

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精選版 日本国語大辞典 「辺塞詩」の意味・読み・例文・類語

へんさい‐し【辺塞詩】

  1. 〘 名詞 〙 漢詩で、辺境の地の事物や生活を題材とした詩。辺境に出征した兵士の情や残された家族の悲しみを詠じる。中国の盛唐期に、山水詩と並び盛んになった。王昌齢、高適(こうせき)岑参(しんじん)王之渙崔顥(さいこう)、李頎(りき)王翰(おうかん)らが名高い。

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改訂新版 世界大百科事典 「辺塞詩」の意味・わかりやすい解説

辺塞詩 (へんさいし)
biān sài shī

中国古典詩の一ジャンル。辺塞は国境の要塞,ことに長城さし,長城をシンボルとする,北部・西部遊牧民族との国境地帯に題材を取った一群の詩。対遊牧民族戦争と,遠征にかりだされた兵士の悲哀が中心で,故郷に残した妻への兵士の想いを通じて,閨怨(けいえん)詩に結びつく。国境を旅する作者の緊張した内面を写すものもある。楽府(がふ)の形式を取ることが多い。古来,西北国境に重圧を加えた遊牧民族との闘争は,中国の歴史的課題であり,それに文学的表現を与えたのが辺塞詩である。漢代に烏孫(うそん)公主や李陵など,辺塞の地を踏んだ人の感懐が伝えられるが,意識的には斉・梁期(479-557)から作られはじめ,唐代前半の世界帝国形成を背景に,岑参(しんじん),高適(こうせき),王昌齢らによるめざましい繁栄があった。中唐以後は,辺塞に対する詩的エネルギーは衰弱して,ほとんど跡を絶つ。耶律楚材(やりつそざい)の西域詩などがあっても,辺塞詩とはいいがたい。
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