近江毛野(読み)おうみのけぬ

精選版 日本国語大辞典 「近江毛野」の意味・読み・例文・類語

おうみ‐の‐けぬ【近江毛野】

  1. 大和時代武将継体天皇二三年(五二九)、筑紫国造磐井の乱鎮圧後、新羅(しらぎ)に侵略された任那(みまな)を回復するため渡海したが失敗。翌年帰国の途中対馬病死継体天皇二四年(五三〇)没。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「近江毛野」の意味・わかりやすい解説

近江毛野(おうみのけぬ)
おうみのけぬ
(?―530)

6世紀、任那(みまな)に派遣された近江豪族。『日本書紀』に以下のような所伝がみえる。527年(継体天皇21)毛野臣(おみ)は、6万の兵を率いて、新羅(しらぎ)法興王に破られた南加羅(から)(金官加羅国)、喙己呑(とくことん)(現在の韓国慶尚北道慶山か)を復興すべく派遣される。ところが、新羅に通じていた筑紫国造(つくしのくにのみやつこ)磐井(いわい)の乱によって、行く手を遮られ、乱の鎮定後、529年ようやく渡海することができた。任那駐在中の2年間、任那諸国への侵攻、領土拡張をねらう新羅の攻勢を抑え、緩和すべく努力するが結局失敗する。また、この間誓湯(うけゆ)(盟神探湯(くかたち))を好んで行い、任那人を苦しめて反発を招く。そのため、任那王阿利斯等(ありしと)の要請を受けた百済(くだら)・新羅の攻撃を受けることになり、さしもの毛野臣も召還されて、帰国の途中、対馬(つしま)で病死する。

[小林敏男]

『末松保和著『任那興亡史』(1949・吉川弘文館)』


近江毛野(おうみのけの)
おうみのけの

近江毛野

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改訂新版 世界大百科事典 「近江毛野」の意味・わかりやすい解説

近江毛野 (おうみのけの)
生没年:?-530

6世紀前半の継体朝に朝鮮遠征に赴いた武人。近江の豪族。527年兵6万を率いて任那(みまな)に赴き,新羅に奪われた南加羅・喙己呑(とくことん)を回復しようとしたが,筑紫国造磐井(いわい)にはばまれて果たせなかった。翌年磐井が誅されたので,529年渡海し,任那と新羅・百済との和解を工作するが失敗。翌年任那王はかえって毛野を攻撃した。彼の失政が日本へ報告され,継体天皇の命で召還される途中対馬で病死した。
磐井の乱
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「近江毛野」の意味・わかりやすい解説

近江毛野
おうみのけぬ

[生]?
[没]継体24(530).対島
古代の武将。継体 21 (527) 年,6万の兵を率いて朝鮮の任那におもむき,新羅に併合された旧地を回復しようとしたが,途中,九州磐井の乱にあってはばまれ,同 23年朝鮮に渡った。まず旧地の南加羅,喙己呑 (とくことん) の2国を復興させたが,策を誤り,百済の反感を買った。次いで勅命により,任那,新羅,百済の諸王と会盟し,任那への進出停止を誓わせようとしたが失敗して,新羅によりさらに侵略された。彼は久斯牟羅に駐留して政治にあたったが,失政が多く,2回にわたり現地からその非が日本に報じられ,任那王も百済,新羅とともに毛野を攻めた。帰国途上,対馬で病死。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「近江毛野」の解説

近江毛野 おうみの-けの

?-530 6世紀前半の武人。
近江(滋賀県)の豪族。継体天皇21年(527)任那(みまな)救援,新羅(しらぎ)征討のため6万の兵をひきいて出発したが,九州で磐井(いわい)の反乱によってはばまれた。23年朝鮮にわたり,任那保全のため新羅,百済(くだら)と交渉したが失敗。帰国の途中,24年対馬(つしま)で病死した。

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世界大百科事典(旧版)内の近江毛野の言及

【磐井の乱】より

…故,物部荒甲(あらかひ)の大連,大伴金村の連二人を遣わして,石井を殺したまひき〉と記す。《日本書紀》の記すところでは,継体21年(527)6月に近江毛野が6万の軍を率い,任那に赴き新羅に破られた南加羅・己呑(とくことん)を復興しようとしたとき,かねて反乱の機をうかがっていた筑紫国造の磐井が,新羅の貨賂をうけ火・豊2国に勢力を張って毛野の軍を遮断したので,天皇は大伴金村,物部麁鹿火,許勢男人らに征討を命じた。翌年11月に至って,大将軍の麁鹿火がみずから磐井と筑紫の御井郡で交戦し,ついにこれを斬ることをえた。…

※「近江毛野」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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