城郭の防御施設の一種。〈さかもがり(逆虎落)〉から派生した語と解されているが,〈虎落(もがり)〉は枝つきの竹垣のことで,戦国時代末の《築城記》に〈モガリ竹は枝をソギてもぐまじき也〉〈土居にさかもがりをゆふ。くゐをうち,横木ヲゆひ,それへ折かけゆふ也〉と記されており,《築城記》よりはるか以前の文献から逆茂木,逆木の語が見られるので,竹でなく樹木を指すと思われる。《平治物語》中巻に〈弓手には逆木じうまんして,前は堀河〉〈竜下越にさかもぎ引かけ,かひだてこしらへまちかけたり〉とあり,《平家物語》に〈奈良坂・般若寺,二箇所の路を掘切て,堀ほり垣楯かき,逆茂木引て待かけたり〉(巻五),〈宇治も勢田も橋を引き,水の底には乱杭打て大綱張り,逆茂木つないで流し懸けたり〉(巻九),《太平記》には〈鹿垣ヲ二重三重ニ結ヒ廻シ,逆茂木シゲク引懸テ,矢懸リ近クゾ攻タリケル〉(巻三十六)とみえる。これらの例から,逆茂木は枝つきの樹木を,枝先を外に向けて並べたものであることがわかる。
執筆者:村田 修三
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敵の襲撃に備えて,鹿の角のようになった茨の枝などを逆立てて地に差したり,垣に結ったりした防御具。「さかもがり」の略という。臨時築城の際の要素の一つで,治承・寿永の内乱期頃から現れ,中世を通じて使用された。施設としては単純なものであり,自軍の攻撃の際には容易にとり除くことができ,また一時的ではあるが,敵の進行を遮断することもでき,自陣に攻撃の余裕をつくった。
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…《和訓栞》に〈もがり 竹を並べ行馬のごとく,毎節に枝を存し,物をかけほすに便りするをいふは,曲りの義なるべし〉,あるいは〈もぎはもがり也,かり反ぎ也〉とあり,《築城記》に〈モガリ竹ハ枝をソギてもくまじき也,又所々木の柱をたつる也〉とあるので,〈もがり〉の語源は〈曲り〉とも〈もぐ〉とも考えられるが,定かでない。もがりの竹の先をとがらせて外に向けて斜めに立てて結ったものを〈さかもがり〉といい,逆茂木(さかもぎ),逆木に通じた。なお冬に風が竹垣などにあたり“ひゆうひゆう”と音を発することを虎落笛という。…
…木を打ち込んで並べたもので,水利施設としては水勢をそいだり水流をそらせる水刎(みずはね)の一種。城郭の防御施設としては逆茂木(さかもぎ)と同類の,人馬の通行を妨げるものだが,逆茂木と比べて乱雑に打たれたのでこの名が起こったと思われる。また逆茂木が土塁など城内の随所に設けられたのに対して,乱杭の用例は川や堀に限られる。…
※「逆茂木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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