虚構の人名。醍醐天皇の第3皇女で,蟬丸の姉宮。生まれながら髪が空に向かって逆立っている異形の女性。逆髪を名とする人物は,謡曲《蟬丸》以前には見当たらない。しかし,謡曲作者の創作ではなく,中世以前に逢坂(おうさか)山周辺に伝承されていた口承説話にもとづいたのではないかと考えられる。盲目の蟬丸が逢坂山の藁屋で琵琶を弾じているところへ,姉宮で,逆髪の業のゆえに遺棄されて放浪する逆髪が立ち寄り,薄幸の姉弟がつかのまの奇遇を喜び,なぐさめあい,なごりを惜しみつつ立ち去るというのが,謡曲《蟬丸》の物語である。中世の伝承に,逢坂山関明神には蟬丸の霊と逆髪の霊を併せまつったと説くものがある。逆髪は境界の地を守る〈坂神〉であり,〈サカガミ〉という音通と,畏怖すべき相貌のイメージから生まれ出た女性の名であったと思う。近世に入っては,近松門左衛門作の浄瑠璃《蟬丸》に登場し,さらに歌舞伎の〈蟬丸物〉に,多く男性に転じて〈逆髪皇子〉の名で登場するに至る。
→蟬丸
執筆者:服部 幸雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新