運脚(読み)ウンキャク

デジタル大辞泉 「運脚」の意味・読み・例文・類語

うん‐きゃく【運脚】

奈良・平安時代、租税である調を徒歩で都まで運んだ農民脚夫

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精選版 日本国語大辞典 「運脚」の意味・読み・例文・類語

うん‐きゃく【運脚】

  1. 〘 名詞 〙 奈良・平安時代、綱領(ごうりょう)綱丁(ごうちょう)に率いられて庸、調などの貢物を都に運ぶ人夫。運夫。
    1. [初出の実例]「諸国夫及運脚者、還郷之日、粮食乏少、無達」(出典続日本紀‐和銅五年(712)一〇月乙丑)

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改訂新版 世界大百科事典 「運脚」の意味・わかりやすい解説

運脚 (うんきゃく)

徒歩で物資を輸送する人夫。脚夫,担夫ともいう。律令制においては調の現物を京まで運送する力役はその納入者自身が負担するのが原則とされた。その負担者を運脚といい,《延喜式》によれば,正丁を徴発することになっていた。実際に京まで運ぶ者以外はかわりにその運脚の行旅の費用を出さねばならなかった。それを〈脚直(きやくちよく)〉という。その額は1人1日につき米2升,塩2勺で,帰りは半分として計算された。法制上は調庸物等をかついで運搬するのが原則であったが,実際には船などを用いる場合があり,その賃借料等は脚直があてられた。運脚の役は当時の民衆にとって苦役のひとつであったが,さらに上京して後も都で駆使されることもあった。なお,広い意味では舂米しようまい)やその他の運京物の運搬人夫も運脚に含める場合があるが,彼らに対しては,調庸物運搬の場合と異なり,食料あるいは功直(こうちよく)(賃金)が政府から支払われる場合があった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「運脚」の意味・わかりやすい解説

運脚
うんきゃく

古代において徒歩で物資の輸送に従事した人夫。地方から中央への貢納物の運送に従事した人夫で、脚夫(きゃくふ)、担夫(たんぷ)とも称される。律令(りつりょう)制下の貢納物は、海運や馬によった舂米(しょうまい)(舂(つ)いて脱穀した米)の一部を除き、主として人力によってその運搬が行われた。これらは、調(ちょう)・庸(よう)のように農民から租税として徴収されたものと、国衙(こくが)において正税(しょうぜい)などにより購入されたものとに大別されるが、前者の運送には、運脚の食料などの経費は租税負担者が負担することとされ、後者の運送には、食料が官給されるのが一般的であった。720年(養老4)に、調庸物を除く、両者の中間に位置する舂米などの貢納物の輸送に際し、帰郷の食料が支給され、さらに724年(神亀1)以後、往復とも食料が支給されることとなった。『延喜式(えんぎしき)』では、(1)運送経費が租税負担者の負担とされるもの(調庸、中男(ちゅうなん)作物)、(2)運脚を雑徭(ぞうよう)によってあて、脚夫に食料を支給するもの(年料舂米、年料別貢雑物など)、(3)食料と功賃が支給されるもの(交易雑物など)、の3種類に区分される。また、このような運脚という労役の負担は、古代の農民の疲弊の一因であったともされている。

[加藤友康]

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百科事典マイペディア 「運脚」の意味・わかりやすい解説

運脚【うんきゃく】

脚夫(きゃくふ)・坦夫(たんぷ)とも。古代,調(ちょう)・(よう)などの貢納物を京まで徒歩で輸送する人夫。《延喜式》では運送する力役は諸国の正丁(せいてい)の義務で,実際に京まで運ぶもの以外は,代りにその運脚の行旅の費用(脚直(きゃくちょく))を負担した。運脚の食料は自弁で,上京後も都で駆使されることがあるなど,農民(正丁)の負担は大きく,疲弊の一因となった。なお調・庸以外の雑物,舂米(しょうまい)などの運脚の場合は食料,あるいは功直(こうちょく)(賃金)が支払われた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「運脚」の意味・わかりやすい解説

運脚
うんきゃく

担夫または脚夫ともいう。奈良,平安時代に,いろいろな貨物をになって運送した人夫をいう。調,庸 (→租・庸・調 ) を地方から京師に運んだのも運脚で,主として正丁 (20~60歳の男子) が,食糧などは各自の負担でこれにあたった。また当事国の正税から食糧をまかなわれて,諸国から交易,進上する雑物を京師に運んだ。その初見は『続日本紀』和銅5 (712) 年の条。食糧尽きて途中で死んだ運脚を詠んだ歌が『万葉集』に収められているように,食糧が窮乏し,病気で倒れ,帰国することのできないものがしばしばみられた。これに対する救助策もとられたが,実効はなかった。農民に対するこのような負担が,当時の農民疲弊の一因となった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「運脚」の解説

運脚
うんきゃく

脚夫・担夫(たんぷ)とも。律令制下,地方から中央への貢納物を徒歩で運ぶ人夫。納入される貢納物には,調・庸(よう)と国衙が正税により交易したものとがある。前者の場合,路次の食料などは調庸納入者の負担で,後者の場合,食料などは正税から支給された。「延喜式」では,調庸運脚のほか,運脚に雑徭(ぞうよう)をあて食料を支給するもの,交易雑物のように食料と功賃が支給されるものが規定されている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「運脚」の解説

運脚
うんきゃく

奈良・平安時代,中央政府へ貢納物を徒歩で運搬した人夫
調・庸を出す戸の正丁 (せいてい) があたり,国司などの指導で都に運んだ。往復の食糧は自己負担であったため,帰国の途中で餓死する者もあった。

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普及版 字通 「運脚」の読み・字形・画数・意味

【運脚】うんきやく

運賃。

字通「運」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の運脚の言及

【常平倉】より

…設置時期からすると橘奈良麻呂の変による民心の不安を鎮める意図もあったと思われる。常平倉には諸国の公廨稲(くがいとう)の一部をあて,米の安い時期に買い入れて備蓄し,高値のときには市価より安く売り出して米価の調節を図り,得られた利益で京へ調庸を運んできた農民(運脚(うんきやく))が帰郷する際の飢えを救うこととした。平準署を置いて常平倉を管掌したが,意図されたようには機能せず,仲麻呂が没して数年後の771年(宝亀2)に平準署が廃止された。…

※「運脚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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