日本大百科全書(ニッポニカ) 「選定保存技術」の意味・わかりやすい解説
選定保存技術
せんていほぞんぎじゅつ
文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術または技能で、保存の措置を講ずる必要があるもの。1975年(昭和50)の文化財保護法の改正によって設けられた制度により選定されるもので、文部科学大臣によりその保持者および保存団体が認定される。国は選定保存技術の保護のため、技術の向上や伝承者の育成、記録の作成などのほか、保持者および保存団体への必要な援助を行う。
2021年(令和3)7月時点で認定されている技術は90件である(保持者58人、保存団体35件。同一技術について保持者と保存団体を認定しているものがあるため、両者の件数の合計は選定保存技術の件数とは一致しない)。具体的には、歌舞伎の大道具(背景画)製作や床山(とこやま)、雅楽管楽器製作修理、屋根のかや葺(ぶ)き、瓦(かわら)葺き、檜皮(ひわだ)葺きの技術、手漉(てすき)和紙用具製作、玉鋼(たまはがね)製造(たたら吹き)などがある。
[佐滝剛弘]
なお、選定保存技術のうち、宮大工や左官職人らにより古くから継承されてきた建造物修理、建造物木工、建造物装飾などの伝統建築技術17件が、2020年「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。
[編集部 2022年1月21日]