酸化コバルト(読み)サンカコバルト(英語表記)cobalt oxide

デジタル大辞泉 「酸化コバルト」の意味・読み・例文・類語

さんか‐コバルト〔サンクワ‐〕【酸化コバルト】

コバルトの酸化物。酸化コバルト(Ⅱ)CoOは青緑色の粉末等軸晶系水素炭素とともに加熱すると金属コバルトに還元される。磁性材料原料磁器ガラス着色剤に用いる。酸化二コバルト(Ⅲ)コバルト(Ⅱ)Co3O4黒色結晶。等軸晶系。加熱により酸化コバルト(Ⅱ)になり、四酸化三コバルト、四三酸化コバルトともいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「酸化コバルト」の意味・わかりやすい解説

酸化コバルト (さんかコバルト)
cobalt oxide

酸化数ⅡおよびⅢのコバルトの酸化物と,両方のコバルトを含む酸化物が知られている。

化学式CoO。コバルトを空気中で約900℃以上に加熱するか,あるいはコバルト(Ⅱ)の硝酸塩などを空気を断って加熱して分解すると得られる。灰緑色粉末。比重5.7~6.7。水素,炭素などと加熱すると容易に還元されて金属コバルトになる。酸に可溶。陶磁器,ガラスの着色剤などに用いられる。

化学式Co2O3。種々の方法でこの組成の褐黒色粉末が得られているが,結晶格子のすきまにOの入ったCoOであったり,水和物であったりしていて,純粋なものではないといわれている。

四酸化三コバルトともいう。化学式Co3O4。コバルトを空気中で400~500℃で加熱して得られる。黒色粉末。CoCo2O4スピネル型構造で,CoCo2O4ではない。空気中で加熱すると940℃で速やかにCoOになる。無機酸に徐々に溶ける。
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化学辞典 第2版 「酸化コバルト」の解説

酸化コバルト
サンカコバルト
cobalt oxide

】酸化コバルト(Ⅱ):CoO(74.93).炭酸コバルトを空気を断って熱するか,金属コバルトを赤熱して水蒸気を作用させると得られる.灰白色の粉末または結晶.密度6.45 g cm-3.融点1800 ℃.水,アンモニア水,エタノールに不溶,酸に可溶.空気中で加熱するとCo3O4になる.湿った空気中では容易に酸化されてCoO(OH)になる.磁性材料の原料.二次電池材料,各種酸化反応の触媒,磁器の着色剤,ガラスの製造などに用いられる.[CAS 1307-96-6]【】酸化コバルト(Ⅲ):Co2O3(165.86).三酸化二コバルトともいう.塩化コバルト(Ⅱ)塩素酸カリウムで酸化すると得られる.黒褐色の粉末.吸湿性がある.密度5.18 g cm-3.895 ℃ で分解してCo3O4を生じる.酸化作用があり,塩酸に溶かすと塩素を発生する.水,エタノールに不溶.ガラス着色剤に用いられる.[CAS 1308-04-9][CAS 12016-80-7:Co2O3・H2O]【】酸化コバルト(Ⅱ)二コバルト(Ⅲ):Co3O4(240.80).四酸化三コバルトともいう.水酸化コバルトを空気中で強熱すると得られる.黒色の粉末.吸湿性がある.密度6.07 g cm-3.Co Co2O4のスピネル型構造.900~950 ℃ でCoOになる.水,塩酸,硝酸,王水に不溶,硫酸や融解水酸化ナトリウムに可溶.二次電池材料,電子材料,顔料,うわぐすりなどに用いられる.[CAS 1308-06-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化コバルト」の意味・わかりやすい解説

酸化コバルト
さんかこばると
cobalt oxide

コバルトと酸素の化合物で、次の組成のものが知られている。

(1)酸化コバルト(Ⅱ) 一酸化コバルトともいう。製法によって黄・褐・黒・灰緑色などの違いがあり、比重にもある程度の幅がある。炭酸コバルトを空気を断って加熱すると、理想的組成に近い淡灰緑色の結晶が得られる。塩化ナトリウム型構造で、室温で反強磁性体である。空気中で安定であるが、酸に溶ける。

(2)酸化二コバルト(Ⅲ)コバルト(Ⅱ) 化学式Co3O4、式量240.8。四酸化三コバルトともいう。酸化コバルト(Ⅱ)を酸素中427℃に熱すると得られる立方晶系の黒色の結晶。正スピネル構造をとるが、自発磁化をもたない。水には不溶だが酸には徐々に溶ける。950℃以上に熱すると酸化コバルト(Ⅱ)になる。なお、酸化コバルト(Ⅲ)Co2O3の組成に相当する化合物の存在は確認されていない。

[鳥居泰男]

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