采覧異言(読み)さいらんいげん

精選版 日本国語大辞典 「采覧異言」の意味・読み・例文・類語

さいらんいげん【采覧異言】

江戸中期の地誌。五巻。新井白石著。正徳三年(一七一三成立、享保一〇年(一七二五)改訂完了。ヨーロッパアフリカアジア南北アメリカ地理歴史風俗産物などについて江戸在留中のオランダ人などの外国人に尋ね、マテオ=リッチの「坤輿万国全図」、ブラウの「世界図」などを参照して記した書。徳川家宣の命により鎖国下の限られた資料と知識で可能な限り正確に世界事情を調べたもの。

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デジタル大辞泉 「采覧異言」の意味・読み・例文・類語

さいらんいげん【采覧異言】

世界地誌。5巻。新井白石著。正徳3年(1713)成立。イタリアの宣教師シドッチへの尋問や、オランダ人からの聴取もとに、中国地理書を参照して著したもので、地理・風俗・産物・政治など海外事情を詳細に解説する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「采覧異言」の意味・わかりやすい解説

采覧異言
さいらんいげん

新井白石(あらいはくせき)の著書。ひとまず1713年(正徳3)に成ったが、完成は1725年(享保10)。7代将軍徳川家継(いえつぐ)に献上したもので、「異言(外国の言語風俗)を采(と)り覧(み)る」の語の示すように、海外事情を将軍に認識してもらうために書いた漢文体の作品。そのきっかけは、1708年(宝永5)屋久(やく)島(鹿児島県)に潜入上陸したイタリア人宣教師シドッチの取調べにあたったこと、その後江戸へやってきたオランダ商館長らと会談したことにあり、両方からヨーロッパをはじめ全世界の地理、風俗、物産、政治情勢などを聞き取った結果、この書物が生まれた。本書は『西洋紀聞』と違い、多くの知識人に筆写され広く読まれたことから、江戸末期に至るまで最高の世界地理書として権威をもち、ジュリオ・アレーニ(中国名艾儒略(がいじゅりゃく))の地誌『職方外紀(しょくほうがいき)』と並んで知識人の間で広く読まれ、絶大な影響を与えた。構成は、巻1欧羅巴(エウロパ)、巻2利未亜(リビヤ)(アフリカ)、巻3亜細亜(アジア)、巻4南亜墨利加(ソイデアメリカ)、巻5北亜墨利加(ノオルトアメリカ)となっている。『新井白石全集 第4巻』所収。

[宮崎道生]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「采覧異言」の解説

采覧異言
さいらんいげん

世界地理の書。5巻。新井白石著。1713年(正徳3)成立。1708年(宝永5)屋久島に潜入したイタリア人宣教師シドッティの訊問時に得た知識をもとに,江戸参府のオランダ人からの聴取や,中国の地理書などを参照してまとめた。7代将軍徳川家継の海外事情の理解に供することを目的とした。巻1はヨーロッパ,巻2はリビヤ(アフリカ),巻3はアジア,巻4は南アメリカ,巻5は北アメリカを扱い,内容の大概は「西洋紀聞」中巻と重なる。鎖国下の日本の海外知識受容の基本書。1802年(享和2)山村才助が増補した(「訂正増訳采覧異言」)。「岩波文庫」「新井白石全集」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「采覧異言」の解説

采覧異言
さいらんいげん

江戸中期,新井白石の著した世界地誌
1713年成立。5巻。イタリア人宣教師シドッチを審問して得た知識と中国の地理書から得た知識を比較し,世界の地理・歴史・政治・風俗を紹介したもの。洋学の先駆的意義をもつ。『西洋紀聞』とともに世界知識の吸収に重要な役割を果たした。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「采覧異言」の意味・わかりやすい解説

采覧異言
さいらんいげん

新井白石著。5巻。正徳3 (1713) 年成稿,加筆ののち享保 10 (25) 年完成。西川如見の『華夷通商考』に次ぐ古い世界地理書で,風俗についても記述している。江戸滞在中のオランダ人から聞きただしてまとめたもの。

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