子どもを他家へあずけて養わせることを里子に出すといい,養育する側を里親という。里子・里親の制度は古く,京都の公卿社会では,幼年の間だけ近郊の農家へ里子に出す風習があった。あずける側は里扶持(さとぶち)などといって養育料を出す風があった。武家の間でも家臣や百姓などに里子に出し,京都,大坂,江戸の町屋では子どもを近郊の村々の農家へあずけ,手習いをするころに実家へ戻す風があった。里子をあずかるほうは実子がない場合とか,乳のある女が乳をのませるなどという意味もあったが,子どもをあずかることによって若干の収入を得ること,また将来の労働力の確保を期するというものが多かった。伊豆の島々などにはこの例がある。長野県北安曇郡では里子に出すことを〈オチに出す〉といい,オチは乳付親のことである。福島,山形,秋田県などでは里子をチシロゴ,里親をチシロという。この地方では乳付親もチシロという。愛知県三河地方では里親をシトネオヤ,仙台地方ではスダテゴガカという。里親の慣習には乳付親や拾い親,養い親などの仮親慣習との関連が考えられる。
→親子成り
執筆者:大藤 ゆき
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…子の保護を目的とする制度のなかで,施設へ通う型,施設養育型とならぶもの。子を家庭で養護する点は養子制度と似ているが,里親里子間に法的親子関係は発生しない。里子
[沿革]
明治初年より捨子,孤児など保護を必要とする子は,行政機関により家庭に委託養育されていた。…
…実際,都市においては,私生児の率が10%を超える例もしばしば見られた。私生児が生まれる最も多いケースは,ブルジョアや商人の家庭における主人と召使の関係であるが,こうして生まれた私生児は,ときに里子に出され,ときには棄児(捨子)とされて,闇に葬られることが多かった。生きながらえても社会的差別の対象となり,村外れの掘立小屋に住んだり,結婚も私生児同士でなければできないといった事例も目につく。…
…幕法をうけた諸藩でも,捨子の養育を命じ,子を捨てた者の処罰を強化した例が多い。処罰例から知られる捨子の実態は,未婚の奉公人や都市細民の出生児のほか,農村でも例が少なくないが,直接生児を遺棄する例より,若干の養育料をそえて里子に出す困窮者に対し,養育料をとって子を捨てる者が,獄門などの重刑に処せられた例が目につく。この種の営利捨子者の厳罰以外には,捨子発見地の住民に養育の義務を負わせるのが,多くの捨子禁令の実態であった。…
…沖縄や日本本土における〈婿養子〉,スマトラ島のミナンカバウ社会における〈嫁養子〉の例は,婚齢期にある者を養子とし,東トレス海峡諸島民においては,生前の子どもをあらかじめ養子として養子縁組を行う例がある。養子縁組による養子は,永久的移籍を伴う例をいい,一時的扶養による〈里子〉とは概念上区別され,一時的扶養による,したがって〈実の親子関係〉に復帰しうる要素をもった親子関係上の慣行は〈養育fosterage〉と称される。この慣行はオセアニア各地によく見うけられるが,養取と養育とが人々の間で明確に区別して認識されていない場合もある。…
※「里子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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