重力波望遠鏡(読み)ジュウリョクハボウエンキョウ

デジタル大辞泉 「重力波望遠鏡」の意味・読み・例文・類語

じゅうりょくは‐ぼうえんきょう〔ヂユウリヨクハバウヱンキヤウ〕【重力波望遠鏡】

重力波を直接的に検出する装置。重力波が伝播する際、時空がごくわずかに歪むが、この時空の歪みレーザー光を用いた干渉計で正確に測定する干渉計型検出器や、特定の長さの物体が共振して変形する現象をとらえる共振型検出器などがある。重力波検出器重力波天文台。→KAGRAかぐらLIGOライゴ
[補説]2016年2月、米国の重力波望遠鏡LIGOライゴにより、連星ブラックホールが合体したときに発せられる重力波を世界で初めて直接観測することに成功したと発表された。

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共同通信ニュース用語解説 「重力波望遠鏡」の解説

重力波望遠鏡

重力波を検出するための装置。宇宙のかなたを知るための研究は長らく、天体が放出して地球に届く可視光赤外線、エックス線、電波などの電磁波を観測する望遠鏡に頼ってきた。今後は新たな観測対象として素粒子ニュートリノや重力波を加えた、より多面的な「マルチメッセンジャー天文学」が進展すると期待されている。日本の「かぐら」を含めた複数の重力波望遠鏡が稼働すれば、重力波の発生源の位置が正確に分かるようになる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「重力波望遠鏡」の意味・わかりやすい解説

重力波望遠鏡
じゅうりょくはぼうえんきょう

一般相対性理論で予言される重力波の検出器。望遠鏡とよばれるが、光学望遠鏡電波望遠鏡とは検出方法の違いにより、形状が異なる。測定方法により検出器には共振型とレーザー干渉計型がある。共振型検出器は弾性体の共鳴振動を利用して重力波を検出する。レーザー干渉計型はマイケルソン干渉計型が多く、重力波望遠鏡の主流方式となっている。マイケルソン干渉計型はレーザー光を2方向に分けて、再度あわせる際に生じる二つの光の位相差により生じる干渉縞(じま)を観測する方式である。その光の位相差は分岐する光路長に応ずるので、長い光路長を達成するために、基線長(光分岐点から反射鏡までの距離)を長くしたり、基線間を何回も往復させるくふう(ファブリペロー型)を行っている。

 数多くの重力波望遠鏡が稼働もしくは計画されているが、重力波が非常に弱いことから、確定的な観測は2015年9月、アメリカのマイケルソン干渉計型重力波望遠鏡LIGO(Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)による検出まで待たなければならなかった。

 日本では、1999年(平成11)から稼働している基線長300メートルの「TAMA300」(東京都三鷹市)と2020年(令和2)稼働の基線長3000メートルの「KAGRA」(岐阜県飛騨(ひだ)市)がある。

 世界では、前述のアメリカの基線長4000メートルのLIGO、イギリスとドイツ共同の基線長600メートルのGEO600、フランスとイタリアおよびオランダ共同の基線長3000メートルのVIRGOがある。

 また、より長い基線長を目ざし、宇宙空間での観測が計画されている。NASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)とESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)が共同で計画しているLISA(Laser Interferometer Space Antenna)は三つの人工惑星で構成され、基線長は500万キロメートルである。日本でもDECIGO(Deci-hertz Interferometer Gravitational Wave Observatory)という基線長1000キロメートルの宇宙重力波望遠鏡が計画されている。

[編集部 2023年10月18日]


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