イングマール・ベルイマン監督による1957年のスウェーデン映画。南スウェーデンの大学町ルンドで名誉博士号を受賞することになった老医師イサク・ボルイが、長男の嫁の運転する自動車に乗って、ストックホルムからルンドまでの長旅をする間、夢のなかで自分の過去を追体験し、また旅の途中、母の住む実家への訪問や、ヒッチハイクをする若者たちとの遭遇などを通して、人生の最後に至った自分の時間をしみじみと感じ取ってゆく。ベルイマンは残酷なまでに、外面的には立派な学者として評価されている老人の内面を暴きながら、単に失望と悲しみに満ちた一人の人間の人生をみせるだけではなく、人生の時間の美しさや優しさをも見事にとらえている。過去の場面において、主人公の医師は、自分だけが現在の年老いた姿で登場する。通常の映画の過去の場面とは異なり、ここでみられるフラッシュバックは、主人公の内面にのみ存在する過去の風景だからである。主人公の老医師を演じたのは、スウェーデン映画史上の重要な映画監督ビクトル・シェーストレームで、実際に死を目前としたこの映画監督の俳優としての最後の名演技である。
[小松 弘]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…1923年,ハリウッドに招かれて,グリフィス監督の映画のヒロインだったリリアン・ギッシュ主演の《真紅の文字》(1925),《風》(1928)など〈サイレント末期の傑作〉を撮り,なかでも《風》は〈サイレント映画であるにもかかわらず,突風のうなり,ガラス窓に吹きつけられる砂の音が聞こえるような気がする〉迫真の名作としてジョルジュ・サドゥールの《世界映画史》に記されている。トーキー時代に入ってからは低迷し,30年にスウェーデンに帰った後もほとんど俳優としての出演作ばかりで,イングマル・ベルイマン監督が彼のために書いた《野いちご》(1957)の主人公の老人の役を最後にその映画人生を終えた。【広岡 勉】。…
…《不良少女モニカ》(1952)で世界的に知られ,《夏の夜は三たび微笑む》(1955)で名声を決定的なものにする。以後,《第七の封印》《野いちご》(ともに1957),《処女の泉》(1960),《仮面/ペルソナ》(1966),《狼の時間》(1968),《夜の儀式》(1969)等々と次々に問題作を発表して〈アート・シアターの巨匠〉となるが,73年のカラー作品《叫びとささやき》が世界的にヒットして(アメリカでは怪奇映画の巨匠として知られるロジャー・コーマンの手で配給された),その〈芸術性〉にも興行価値が認められた。《沈黙》の姉妹を演じたイングリット・チューリンとグンネル・リンドブロムをはじめ,ハリエット・アンデルソン,ビビ・アンデルソン,リブ・ウルマンといった女優たちの〈肉体的演技〉に支えられたその大胆なエロティシズム,すさまじい性描写によっても一時代を画した。…
※「野いちご」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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