スウェーデン映画(読み)スウェーデンえいが

改訂新版 世界大百科事典 「スウェーデン映画」の意味・わかりやすい解説

スウェーデン映画 (スウェーデンえいが)

ジョルジュ・サドゥールをはじめ,世界の映画史家がスウェーデン映画をその北欧的な〈神秘主義〉によって定義している。レスリー・ハリウェルはそれを〈ロマンティックなペシミズム〉と言い換えているが,いずれにせよ,そうした傾向は伝説と現実の微妙な交錯特色としたスウェーデンの女流作家ラーゲルレーブの小説を〈感動的な造形美〉に転化したビクトル・シェーストレーム(《沼の家の娘》1917,《霊魂の不滅》1920)とマウリッツ・スティルレル(《吹雪の夜》1919,《イェスタ・ベルリング物語》1924)によっていち早く世界に知られ,サイレント映画史の輝かしい1ページを飾った。しかし,1920年代半ばにはこの2人はハリウッドに吸収され(デビュー当初のグレタ・ガルボもいっしょに連れ去られた),そしてやがてトーキー時代に入るや,少数言語であるスウェーデン語の映画は海外市場への進出を阻まれ,こうして40年代末までスウェーデン映画にはほとんど空白の時代が続くことになる。50年代に入ってようやく,カンヌ映画祭で受賞した《令嬢ジュリー》(1951)のアルフ・シェーベルイと記録映画作家アルネ・スックスドルフ(《ジャングル・サガ》1954)がスウェーデン映画の存在をふたたび世界に知らしめた。続いて,シェーベルイ監督の《もだえ》(1944)のシナリオライターとしてデビューし,50年代半ばに《不良少女モニカ》《道化師の夜》(ともに1953),《夏の夜は三たび微笑む》(1955)などで世界を驚かせたイングマル・ベルイマンが,スウェーデン映画の〈神秘主義〉を一身に背負って今日に至っている。ギリシア神話のダフネスとクロエの物語を〈純潔な官能美〉で満たした北欧版(サドゥールの評)アルネ・マットソン監督《春の悶え》(1951)の大ヒット以来,スウェーデン映画はセックスのはんらん時代を迎えるが(その頂点がビルゴット・シェーマン監督《私は好奇心の強い女》(1967)であった),ベルイマンはそうした流行とはまったくかかわりなく,《沈黙》(1963)に見られるようなセックスと神,すなわち肉欲と信仰葛藤をテーマに映画をつくり続け,60年代末には〈ベルイマンの神秘主義〉に反発してフランスのヌーベル・バーグの感覚を意識的に採り入れ,〈抒情性と社会性をミックスした〉映画をめざした新鋭監督ボ・ウィデルベルグ(《みじかくも美しく燃え》1967,《ジョー・ヒル》1971)などの登場が注目されたものの,やはり,その豊饒(ほうじよう)な創作活動と息の長いキャリアで〈スウェーデン映画の巨匠〉ベルイマンの位置は不動のままである。

 なお,グレタ・ガルボを筆頭に,〈第二のガルボ〉といわれたイングリッド・バーグマン,アニタ・ビョルク,ビベカ・リンドフォース,ビビ・アンデルソンといったスウェーデン女優がハリウッドに〈輸入〉されたが,なかでもガルボとバーグマンはハリウッドの女優史の中核をなす重要な存在になった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スウェーデン映画」の意味・わかりやすい解説

スウェーデン映画
すうぇーでんえいが

北欧映画

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