歌舞伎作者。通称金井筒屋半九郎。号与鳳亭。江戸中村座譜代の手代で弱冠22歳で帳元になる。1754年(宝暦4)4世市川団十郎の襲名に際し,俳名の三笑を筆名にして作者を兼ねる。帳元をやめ,59年に団十郎付の立作者として独立。《江戸紫根元曾我(えどむらさきこんげんそが)》《蛇柳(じややなぎ)》など当り狂言を書き人気作者となる。63年団十郎と決別,翌年から市村座に立てこもり,団十郎中心の中村座の大一座に対立し,若手のために《色上戸三組曾我(いろじようごみつぐみそが)》などを書く。76年(安永5)息子を中村座座元の跡目にする計画が発覚,以後10年間劇界の表面から姿を消し,市村座の親類として陰で作者を支配した。86年(天明6)中村座の寿興行(寿狂言)を機に3世大谷広次・3世沢村宗十郎・3世市川八百蔵・尾上松助ら子飼いの役者を引き連れ劇界に復帰する。92年(寛政4)剃髪隠居,土盛と名のり,作者仲間の黒幕的存在となる。享保以来の江戸の因襲的な興行制度が崩壊していくなかで,門閥にとらわれない合理的な興行制度をつくりだし,合作制度にふさわしい作者の式法を確立。現存台本は《うれしく存曾我(ぞんじそが)》1編だけであるが,ほかに富本の《四十八手恋所訳(しじゆうはつてこいのしよわけ)》などがある。三笑風と呼ばれる複雑な趣向を合理的な筋に仕立て上げる劇術は門下の4世鶴屋南北に伝承された。ほかに門下として息子の松井由輔,増山金八がいる。
執筆者:古井戸 秀夫
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(古井戸秀夫)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
歌舞伎(かぶき)作者。通称金井筒屋半九郎。江戸・中村座の手代で22歳で帳元になる。1754年(宝暦4)4世市川団十郎の襲名と同時に、俳名の三笑を名のり作者となる。中村座を中心に団十郎付きの作者として活躍、のち団十郎と決別し、市村座を中心に市川家に対抗して劇界に勢力をもち、天明(てんめい)期(1781~89)には江戸作者界を陰で支配した。年中行事に縛られた因襲的な興行制度が瓦解(がかい)していくなかで、自由な、営業本位の制度を再編成する。また、桜田治助(じすけ)の趣向本位の「桜田風」に対して、あくまでも筋立てを重視し、複雑な趣向を機械的に組み合わせる「三笑風」とよばれる劇作法を確立して合作制度にふさわしい作者の式法をつくりだした。『江戸紫根元曽我(えどむらさきこんげんそが)』『蛇柳(じゃやなぎ)』『色上戸三組曽我(いろじょうごみつぐみそが)』などの名が伝わるが、台本が現存するのは『うれしく存曽我(ぞんじそが)』のみである。ほかに富本浄瑠璃(とみもとじょうるり)『四十八手恋所訳(しじゅうはってこいのしょわけ)』など浄瑠璃の詞章が伝わる。3世沢村宗十郎(そうじゅうろう)、3世大谷広次、2世坂田半五郎、初世尾上(おのえ)松助ら名優の育ての親でもある。息子に作者の筒井三鳥、松井由輔(よしすけ)、門下に4世鶴屋南北がいる。
[古井戸秀夫]
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…《双面(ふたおもて)》《関の扉(と)》《戻駕(もどりかご)》などの名作が初演された。桜田治助や金井三笑(さんしよう)も,これらの浄瑠璃をつくるのを得意にした。とくに治助は〈桜田の浄瑠璃〉と呼ばれて,この面の才能を高く評価されていた。…
…原著者不明。筑波大学所蔵本には〈金井三笑撰ト云〉とある。1791年(寛政3)以前に原型が成立,以後の歌舞伎作者たちが転写,補筆したものである。…
※「金井三笑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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