金属石鹸(読み)キンゾクセッケン(英語表記)metallic soap

デジタル大辞泉 「金属石鹸」の意味・読み・例文・類語

きんぞく‐せっけん〔‐セキケン〕【金属石×鹸】

普通のアルカリ石鹸が含むナトリウムカリウムの代わりに、他の金属が入った石鹸。アルカリ石鹸と金属塩とを反応させるか、油脂と金属酸化物とを加熱して作り、鉛石鹸・カルシウム石鹸などがある。水に溶けず、洗浄力はないが、乾燥剤・顔料・防水剤塩化ビニル樹脂安定剤などに使用。

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精選版 日本国語大辞典 「金属石鹸」の意味・読み・例文・類語

きんぞく‐せっけん‥セキケン【金属石鹸】

  1. 〘 名詞 〙 高級脂肪酸樹脂酸ナフテン酸など、アルカリ金属以外の、金属塩の総称。水またはアルコール溶媒として、アルカリ石鹸と金属塩との複分解沈澱法によるか、酸と金属酸化物または金属水酸化物と直接反応させてつくる。金属の種類、酸の種類の組合わせにより、多くの種類がある。油脂の乾燥剤、グリース増粘剤、塩化ビニル樹脂の安定剤などのほか、防水剤、殺虫剤殺菌剤加硫促進剤、化粧品、医薬品、農薬など用途が広い。

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改訂新版 世界大百科事典 「金属石鹸」の意味・わかりやすい解説

金属セッケン(石鹼) (きんぞくせっけん)
metallic soap

高級脂肪酸などの有機酸とアルカリ金属以外の金属イオンとの塩。一般に金属イオンの名をつけて,アルミニウムセッケンカルシウムセッケンなどと呼ぶ。金属セッケンには,有機酸と金属イオンが等モル反応した中性セッケンのほかに,一方の過剰な組成をもつものも生じやすい。塩基性オレイン酸鉛2PbO・Pb(C18H33O22,酸性樹脂酸鉛(C20H29O22Pb・2C20H30O2がその例である。また金属イオンが多価の場合,塩を形成する有機酸の数により,モノソープ,ジソープ,トリソープなどが理論的には形成されうるが,アルミニウムセッケンの場合などでは,ジソープがおもに生成し,トリソープは確認されていない。

一般に結晶性の固体または液体で,金属イオンの色をもつ。C8以上の有機酸金属セッケンは一般に水に不溶で,むしろ有機溶剤に可溶であり,アルカリセッケン(普通に用いられるセッケンで高級脂肪酸のアルカリ金属塩)とは逆である。アルカリセッケンを含めて,セッケンは一般に固相で比較的多量の水を吸収し,膨潤する性質がある。酸基が同一の場合には,膨潤率はNH4>K>Na>Li>Mg>Ca>Pb>Baの順となる。また酸基の分子が大きいほど膨潤率は大となる。セッケンが形を保ったまま吸収する最大抱水量を膠化能(こうかのう)gel capacity(略号gc)という。ステアリン酸マグネシウムは230%の水を吸収するので,gc2.3である。金属セッケンには炭化水素に容易に分散してゼリーまたはゲルを形成するものもある。

水溶性アルカリセッケンの水またはアルコール溶液に目的とする金属の硫酸,硝酸,塩化物などの水溶性塩を過剰量加えて加熱反応させ,複分解により目的の金属セッケンを沈殿,分離する方法が広く行われている。また,金属酸化物または塩と遊離の脂肪酸または油脂とをよく混ぜて100~200℃に加熱反応させる方法もある。

金属セッケンはその油溶性を利用した次のような用途がある。(1)油脂の乾燥剤(ドライヤー) 鉛,コバルト,マンガンの各セッケンが用いられる。油膜の酸化重合を促進させるので,塗料工業ではきわめて重要である。(2)グリース用増粘剤 金属セッケンを鉱油,植物油に溶解すると粘度が増大し,ゲル化する特徴を利用したもので,通常カルシウム,ナトリウム,アルミニウム,鉛の各セッケンが用いられる。(3)塩化ビニル樹脂の光・熱に対する安定剤 バリウムリシノレート,カドミウムステアレート,ステアリン酸鉛等が用いられるが,金属イオンの種類によっては毒性を考慮してその使用に制限がある。(4)その他 繊維防水剤(Al,Mg,Co,Fe,Pb塩),製紙用サイジング剤(Al塩),農薬(Ca,Cu,Hg塩),医薬(Cu,Hg,Zn,Pb塩),化粧品(Zn,Ca,Al,Mg塩),そのほか擬革,印刷,ドライクリーニングなどに広く用いられている。
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百科事典マイペディア 「金属石鹸」の意味・わかりやすい解説

金属セッケン【きんぞくせっけん】

高級脂肪酸,樹脂酸,ナフテン酸などの有機酸とアルカリ金属以外の金属イオンとの塩の総称。金属として用いられるのはアルミニウム,マンガン,コバルト,鉛,カルシウム塩など。水に難溶で一般に結晶性の固体または液体。ドライヤーゲル化剤,顔料,防水剤,加硫促進剤,殺虫剤,殺菌剤などに利用。
→関連項目グリースセッケン(石鹸)

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化学辞典 第2版 「金属石鹸」の解説

金属セッケン
キンゾクセッケン
metallic soap

脂肪酸のナトリウム,カリウム塩以外のすべての金属塩の総称.アルカリセッケン(ナトリウムセッケン,カリウムセッケン)と異なり,水に難溶ないし不溶性で,有機溶媒に対する溶解性は,金属,脂肪酸,溶媒の種類によって異なり,その溶解状態は分子状およびミセル溶液,ゲルなどの形態をとる.アルカリセッケンが洗浄用に使用されるのに対し,塩の種類によって,化粧品,潤滑剤,光沢剤,顔料分散剤などに用いられる.[別用語参照]セッケン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金属石鹸」の意味・わかりやすい解説

金属石鹸
きんぞくせっけん
metallic soap

アルカリ塩以外の金属塩から成る石鹸。アルカリ塩から成る石鹸にアルカリ塩以外の金属塩を加えるか,油脂,脂肪酸,樹脂酸,ナフテン酸などに金属酸化物を加え加熱して得られる。水には不溶であるが,油脂や鉱油に溶けるものがある。代表的金属石鹸として,カルシウム,アルミニウム,亜鉛,マグネシウム,バリウムなどがある。平版印刷,乾燥剤,ゲル化剤,顔料,化粧品,防水剤,殺虫剤,殺菌剤などに広く利用される。

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世界大百科事典(旧版)内の金属石鹸の言及

【セッケン(石鹼)】より

…炭素数6以上の脂肪酸を高級脂肪酸というが,セッケンにはC7~C21,実用上はC12~C18の飽和または不飽和脂肪酸が用いられる。金属塩としては,ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム,アルミニウム,スズ,亜鉛,鉛,コバルト,ニッケルなどの塩があるが,一般にセッケンという場合はナトリウム塩とカリウム塩(アルカリ金属塩)を指し,他の金属塩は金属セッケンと呼んで区別する。これは高級脂肪酸のアルカリ金属塩は水溶性であり,洗浄力が大きいため,古くから洗浄用に使用された歴史があり,一方,他の金属塩はアルカリ金属塩に比べて物性がかなり異なるためである。…

※「金属石鹸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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